なぜ学力二極化の原因が経済格差なのか

子どもの学力について「勉強ができる子」と「できない子」の二極化が進んでいると感じている人が60%を超え、うち70%近くは「家庭の所得格差が原因」と考えていることが27日、有識者らでつくる「日本の教育を考える10人委員会」(委員長・佐和隆光立命館大教授)の義務教育アンケートで分かった。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060527-00000111-kyodo-soci

まず,最初に持った感想は,“経済格差”が騒がれているからこれ位の結果になるだろうなというものです.しかし,この結果は逆に捉えると,4割位の人が積極的(?)に,“いや,そうではない(経済格差以外に原因がある)”と答えているということになり,その事実には興味をひかれます.

また,一方でこんな記事もありました.

親の経済力の違いがはっきりと表れるのが中学受験だ。小4から進学塾に通うのが一般的。無事合格しても入学金や授業料などがかかる。家計が苦しいと尻込みしがちだが、情報を集め、やりくりを工夫して私立に進学させた例も少なくない。

http://www.asahi.com/edu/news/TKY200605290229.html

ここで紹介されている事例が,“所得の少ない家庭”に含まれるのかどうかは分かりませんが,経済的に不利な層でも学力差を埋めることは可能なようです.

さて,それでは何故,学力二極化の原因を“経済格差”と答える人がこれだけ多いのでしょうか.それは,“そうであって欲しい”と思っている人(親)が多分に含まれているからのような気がします.

がんばれば成績が上がる、という思想は危険だと思う。比較文化学者の小谷野敦が、『中庸、ときどきラディカル』で、次のように述べている。私もまったく同感である。

・・・(中略)・・・

その頃私は大学生として、塾教師や家庭教師のアルバイトをしていたが、中には、どう教育しても無駄ではないかと思えるような、勉強への意欲もなく努力する能力もない生徒が大勢いた。「受験戦争」の本当の問題は、このような子供でもカネを注ぎ込めば何とかなると信じた親たちにあったのだ。

小谷野敦『中庸、ときどきラディカル』筑摩書房 p.131)

http://simple-u.jp/pd200403.html#2004-03-05

実際問題として,昔(40〜50年前?)に比べて,塾位ならばある程度誰でも通えるような社会になってきており,学力における経済的な格差は随分と縮小してきています.その結果,“学力差=個人資質の差”が強調されるようなケースも随分と増えてきました.しかし,親としてはやはりその事実は受け入れ難く,原因を“他の何か”にしておきたいという気持ちが(無意識的にでも)働きます.その結果として,最初に紹介したようなアンケート結果になったのではと思います.