マナー違反にいらつくとき

iPodの難聴訴訟と関連させて,電車内の音漏れを批判している記事について.全体的に筆者の不満爆発だなぁという印象でしたが,一箇所気になる部分があったので,その箇所について.

不思議なもので、ここまでくると不快を通り越し、思わず耳を傾けてしまう。どうやら音漏れを不快に感じさせるのは、マナーの悪さはもとより、音楽を中途半端に聴かされることにあるようだ。曲として成り立っていると、不快のピークを通り過ぎる。たとえば、人と人との会話は電車内にあって当然なので聞き流せるが、携帯電話の通話になると妙に気になるもの。理性では聞かなくて良い情報だとわかっていても、片方の声しか聞こえないため、内容を補完しようと無意識にあがいているのが不快さの理由かもしれない。音楽の場合も同じだと思う。

http://plusd.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/0607/05/news082.html

私個人の場合は,音漏れでいらついた経験はほとんどなく,どちらかと言うと電車内の会話でイラっとくる場合の方が多いように記憶しています.また,携帯電話に関しても,どちらかと言うと40台を超えているような方が大声でしゃべっている時が一番いらつくような気がします.

さて,この差は一体どこから来るのでしょう.これは,恐らくは,各人の中にはそれぞれいらつく行動リストが存在しているからではないかと思います.そして,このいらつく行動リストはその人の怒りを増幅させる性質を持っています.例えば,“少しマナーから外れているのではないか”と思われる行動に遭遇した場合,人はまずその行動を自分のいらつく行動リストと照らし合わせます.そして,幸運にもその行動がリストにヒットしなかった場合には“マナーなってないよな”と思いつつもスルーすることができます.しかしながら,不幸にもヒットしてしまった場合には“やっぱりこれだ!これだから○○○は!!”と怒りに達する事となります.

さらに,このいらつく行動リストは,エントリの登録は簡単だが削除は難しいという性質も併せ持ちます.ある“マナーから外れている行動”を目撃したとき,たまたまその程度がひどかった場合には“これはひどい.すぐにリストに登録しなければ”となり,それ以降,程度はマシであってもその行動を見ると妙にいらつくようになってしまいます.そして,一旦登録してしまうと“あの時がひどすぎたんだよ”とはなかなか思えないため,リストから削除することは困難になります.

社会一般的に,電車内での携帯電話やヘッドホンからの音漏れはマナーのない行動と認識されているので,できるだけそういった行動はしないように心がけるという事はもちろん大切なことです.ですが,同時にいらつく行動リストへ登録する閾値を下げる努力というのも現在の社会では必要なのかなと思います.上記の筆者の例で言うと,“電車内で人と人の会話があるのは当然”と思える程度の心の寛容さは持ち合わせているようなので,それを“現代社会では携帯電話くらい仕方ないよな”とか“まぁ多少の音漏れくらいは仕方ないか”とその寛容さを他のものへも広げていけば,精神衛生上においてもよろしいのではないかなと思いました.