統計マジック

2006年11月15日の朝日新聞朝刊に、「いじめ、テレビやゲーム漬けが影響か 京大など調査」という記事が出ていた。脊髄反射しそうになるのをぐっとこらえて、ここは冷静にいきたい。

http://www.h-yamaguchi.net/2006/11/post_851e.html

統計データには常に罠が潜んでいる,というのはいろいろな所で言われていることですが,これに関しても何らかの罠が潜んでいそうです.元の記事では,“1日のテレビ視聴が1時間以内の子に比べ、4時間以上の子がいじめをした経験は、高校男子で1.2倍、同女子で1.4倍多かった。ゲームの時間や携帯電話のメール交換頻度でも同じ傾向が出た。”となっているようです.データからは,“テレビやゲームの利用時間といじめの経験には相関関係がある”というのは事実です.問題は,テレビ漬けになっている“から”いじめに走りやすくなるのかどうか,という点です.

「キレる子供にしないための食事」というのも、典型的な統計の嘘だろう。たしかにデータで見れば、ジャンクフードばかり食べている子供の方が、非行に走りやすい。でもそれは、食事が影響を与えているわけではなく、家庭の環境やしつけが影響しているのだろう。家庭環境がよければ、ジャンクフードばかり食べさせることはしない。食事を改善しても、本質的な部分で間違っていれば、効果がないだろう。

http://simple-u.jp/pd200401.html#2004-01-15

今回の例でも,同様のことが言えるのではないかと思います.先にも述べたように,データの上では“テレビやゲームを長時間する人ほどいじめに走りやすい”という結果が見られます.しかし,これはどちらかというとテレビやゲームをそれだけ長時間できる家庭環境の方が問題であるように思えます.もし仮に,この結果を信じてテレビやゲームの時間だけを制限した家庭があったとしても,その子供がいじめに走る確率はあまり変わらないのではないかな,と思います.

朝日新聞を購読している家庭の子どもほど、学校の成績が良い。

・・・(中略)・・・

朝日を読んだから成績が上がるわけではないことに注意したい。統計のよくある誤解である。子どもの教育にとって比較的良い家庭は、朝日新聞を読む傾向にある、というだけである。

http://simple-u.jp/pd200402.html#2004-02-23

統計データには,いろいろな罠が潜んでいます.恣意的な設問だった,恣意的な解釈をした,単に思慮不足だった,etc.特に,“何故そうなるのか”に関しては,(実際に分析を行っている人も)勘違いしやすい罠です.そういった諸々の罠も考慮して統計データとは付き合わなければな,と思います.

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