世間とは誰なのか

「世間知らず」って言うけれど、どこまで知ってりゃ「世間」を知ってる人間になれるんだろうかね。

世間を知っている社会人なんて実はほとんどいない?

ふと,最近読んだ小説の一節を思い出したので抜粋してみます.

「あんたはさっきから、二言目には“大衆”と言ってるな。愚かな大衆だの、大衆にアピールするだの。あんたの言うその“大衆”とやらは、いったい何のことだ?私にはわからんね。あんたが生まれるずっとずっと前に、私らは国が滅びるかっていうくらいの大戦争をした。だけどそのときだって、ひとまとめにして“大衆”なんて呼ばれるもんは、どこにもなかったよ。私らはみんな大日本帝国の国民だったけども、死んだり焼かれたり飢え死にしそうになったりする時には、みんな一人一人の人間だった。だから辛かったし、怖かったんだ。あんたは“大衆”だの“若者”だのの言葉を気軽に使って、それでもって何もかもひとくくりにしとるけど、そんなものは幻だ。あんたの頭のなかだけにある幻だ。大方、その“大衆”なんぞという幻も、どこかの誰かが言っていたことを、そのまま借りてきたんだろうけどな。それがあんたの得意技だから。あんたは物真似猿だからな」

宮部みゆき 「模倣犯(5)」

個人的に思うところもいくつかあったりするのですが,あれこれ言うのも野暮だなという気がするので今日はこれだけ.

模倣犯”は,どこかで冒頭だけ読んだきりで,いつか最後まで読もうと思いつつそのままだったのですが,正月あたりに無事(?)完読.予想以上に長編で,丸2日位費やしてしまいましたが.↑もそうですが,この小説は,ストーリー自体よりも所々で使われているフレーズの方が印象に残っていて,そういう意味では少し変り種だなという感想を持ちました.