相関関係と因果関係

「休日に寝だめ」は逆効果=平日差大きいほど不眠、抑うつ−働く人の睡眠調査という記事が目に留まりました.私自身は,休日だからと言って睡眠時間が多くなる訳ではないですが,基本的に不規則なので少し気をつけようかなと思いました.

さて,この記事に対するコメントに“本当に因果関係があるのか?単に欝な人が寝すぎてるだけじゃないのか?”というものが数多く存在していて,少し興味を惹かれました.統計データからの考察でもそうですが,相関関係と因果関係を混同しているケースは多々あり,それ故,誤った結論を導いている例もしばしば目にします.

以上の2つのデータから、朝日新聞を読んでいる家庭の子どもは、学校の成績が良い、ということが言える。(朝日新聞を読む人は高学歴であることが多い。高学歴者の子どもの成績は良い。よって、朝日新聞を読む家庭の子どもの成績は良い、というロジック)

・・・(中略)・・・

朝日を読んだから成績が上がるわけではないことに注意したい。統計のよくある誤解である。子どもの教育にとって比較的良い家庭は、朝日新聞を読む傾向にある、というだけである。

http://simple-u.jp/pd200402.html#2004-02-23

相関関係があるかどうかは,統計データなど結果を見れば分かります.一方,因果関係については,得られた結果をもとに追加調査などを行わないと分からないケースが多いです.相関関係だけで議論してしまいがちになる理由のひとつがここにあるのだろうと思います.

さて,いつも正しい訳ではありませんが,因果関係があるかどうか検討する方法のひとつに,“それをやっていない人がやってみたらどう変化するか”を考えてみるというものがあります.例えば,先の新聞の例で言うと,今まで別の新聞を読んでいた人が突然朝日新聞を読み始めたからと言って,成績が向上する訳ではありません.新聞の例は,相関関係はあるが因果関係はない典型であることが分かります.

それに対して,睡眠に関してはどうなのでしょう.例えば,睡眠に関しては朝日(朝の日光の方)が大切という話をよく聞きます.

さて、この記事を見ると遺伝子の中に時間をカウントするものが16個あって、うち9個が朝用だという。そして興味深いのは朝に働く遺伝子が上手く働かないと、昼や夜に働くものが上手く働かないというところ。この記事を見ただけで各遺伝子の詳しい働きはよくわからないが、とりあえず朝は重要らしい。

http://blog.goo.ne.jp/tfactory/e/28f79401fb7192993b4b86689482ba5c

体内時計をリセットするのに朝日が密接に関係しているため,起床が遅いと体内時計が狂ってしまい,いろいろな障害が起きやすいようです.そのため,睡眠時間を減らして早い時間に起床する有効性もある程度存在しそうです.実際,うつ病の治療に関しても朝日の存在はそれなりに重要と捕らえられているようです.

窓を開けて日光を入れる。蛍光灯や電灯の光では弱すぎて足りない。とにかく部屋を明るくする。自分の体に日光を当てる必要はない。明るい場所を見るだけでよい。

http://server343.dyndns.org/utu/contents/flame_1.html

この辺りの結果から,例えば,うつ病気味で起きる時間の遅い人が睡眠時間を短くして朝起きるようにすると,多少の改善は期待できそうです.その意味で,最初の睡眠時間の話は相関関係だけではなく,ある程度の因果関係もあるのではないかと推測できます.

因果関係があるかどうかは分からないが詳しく調べる時間もない,と言うような場合はこういった方針で考えるとそれなりに有効なのでは,と思います.