はてブコメント論

何となく書きたくなったので.まず,私の立ち位置としては以下のようになります.

これを踏まえた上で,現在感じている事をいくつか書き連ねていきます.

エントリ主としてのはてブコメント

まず,エントリ主(ブックマークされた側)としてはてブコメントを見た場合.私は,何かしらのエントリを公開するときは,読者からのフィードバックをある程度期待して公開します*1

読者からのフィードバックを得る方法としてまず考えられるのが各エントリのコメント欄ですが,残念ながら現状では(多くの場合において)コメント欄はうまく機能しません.コメント欄をうまく機能させるためには,読者がコメントを書くことに対しての心理的抵抗感を下げるようなサイトの雰囲気作りが必要となります(参考: 沈黙のオーディエンス問題).例えば,2ch のまとめブログのようなサイトではこれに成功しており,各エントリに多数のコメント(フィードバック)が寄せられています.しかし,そのコメントを見てみると(主観ですが)はてなブックマークで見られる以上にノイズと思われるようなコメントが散見しており,ここから有用なフィードバックを得ようとした場合,フィルタリング作業に大きな労力を割かれることになります.

はてなブックマークのコメントにおいて,このフィルタリングに大きく貢献しているは ID だろうと思います.

たとえ実名に紐付けられてなくても、いつも使っているHNはネット上で実名と同じ機能を果たす。趣味などを通じてAさんが築いたコミュニティとAさんは、HNで結び付けられている。

 罵詈雑言を書いたせいでHNが穢れてしまえば、Aさんはかけがえのない自分のコミュニティを失う危険性がある。これはリッパに抑止力になるだろう。

「世間体を気にする」といえば、なんだか形だけの体裁にこだわる形式主義みたいで評判がよくない。だが実はもっと深い意味がある。世間を考えれば人は行動を律するようになる。他人に迷惑はかけないし、いい評価を得ようと努力もする。

匿名の心理、実名の心理~暴言の抑止力になるものは? - すちゃらかな日常 松岡美樹

2ch のまとめブログのコメント欄でもそうですが,コメントを書きやすい雰囲気になると匿名(もしくは捨て HN)によるコメントが増加します.そして,残念な事ですが匿名によるコメントに含まれるノイズの割合は,継続して使用している ID の人が行うコメントに比べてかなり高いものとなります.もちろん,固有の ID で暴言・罵倒を続ける人も存在します.ですが,全体として見ると ID はそれなりに暴言・罵倒への抑止力になっていると感じます.

多くのブログにおいては,同じブログサービスを使用しているユーザのみコメントを許可するように設定できるため,この設定を有効にすることで上記と同様の効果を見込めることができます.しかし,この設定は多くの読者のコメントへの心理的抵抗感を上げてしまうため,前述した読者がコメントを書くことに対しての心理的抵抗感を下げるようなサイトの雰囲気作りと矛盾することになります.コメントできるユーザを制限して尚,数多くのフィードバックを集めることに成功しているサイトも存在しますが,これを成功させることは非常に困難です.

その意味で,ID 付きで発言させる事である程度の抑制力を持たせつつ,コメントしやすい雰囲気を作ることに成功したはてなブックマークは評価できると考えています.

ただし,最初に述べたように,これらは基本的に読者からのフィードバックを得たいと言う立ち位置に立った場合の話です.ブログを書いている人の中には,(どこの誰かも分からない)読者からのフィードバックなど欲しくないと言う人も数多く存在します*2はてなブックマークを“ソーシャルなサービス”と位置づけているのであるならば,欲を言えば,検索エンジンにおける robots.txt のようにソーシャルな場に参加しない方法も提供してあげるべきだとは思うのですが,この辺はいろいろな理由で実現していないようです*3

第三者としてのはてブコメント

次に,第三者(コメントを付けた側でも付けられた側でもない)からはてブコメントを見た場合の感想について.第三者としてブクマコメントを利用することを考えた場合,個々のコメント自体ではなく,コメント率はエントリのフィルタリングに役立つのではと感じています.普段ブクマを見ていての実感といくつかのサンプルデータを見た感想ですが,まとめサイトのようにある分野の情報について網羅的にまとめたサイトや非常に専門的な情報を扱った記事に関しては,全体的にコメント率が低くなります.一方,賛否両論あるような題材を扱った記事や各人の主観に依存するような身近な話題に関しては,コメント率が高くなる傾向があります.そして,google などの検索エンジンを用いて求められる情報としては,前者の情報である場合が多いです.したがって,ある検索ワードでヒットした各エントリを並べる際にコメント率を考慮すると,検索したユーザの需要と合致しやすくなるのではないかなと思います.

ただし,私は他人のエントリを見るときは,そのブクマコメントに関してはそこまで重要視してはいません.コメントも一つ一つきちんと読んでいけば確かに得られる情報もあるのだろうとは思いますが,取捨選択を行うコストも考えた結果,そこまで積極的には読まなくなりました.

ブクマコメントに関しては,一覧できるから問題だと言う指摘もしばしば聞かれます.

また、ブックマークのリンクをクリックしたときにブ米を強制的に見せる必要もない。便所の落書きをわざわざ拡声器を使って読み上げてもらわなくても結構だと思う。それこそブ米を見たい人が見ればいい仕様をデフォルトにするべきだろう。

http://www.oyajiman.net/oyaji/item-2284.html

そのエントリに対するはてブコメントを一覧できる必要はないと言う意見は一理あるとは思います.ネガティブコメントが新たなネガティブコメントを呼んでいる可能性が考えられるので,一覧表示をなくすことによってその現象がある程度緩和される事も期待できます.

しかし一方で,恐らくはこのはてブコメントを一覧できる機能が,コメントを書く心理的抵抗感を下げる(ブックマークコメントは書くもの,少なくとも皆書いてるから自分も気軽に書いても構わない,という意識を植え付けた)のに大きく貢献したのだろうと感じています.その意味で,少なくともサービス初期においては,はてブコメント一覧機能は必要な機能であったと考えられます.そう言うことはブログのコメント欄か掲示板でやれば良いと言う意見もありましたが,そうした場合,まったく利用されないか現状よりももっと酷い状況になるだろう,と言う事は先に述べた通りです.

まとめとして,はてなブックマークを“個人のブックマーク用サービス”ではなく“ソーシャルなサービス”と位置づけているのだとしたら,エントリ主(ブックマークされる側)がその場に参加しない方法を提供をしてあげる事は必要なことだろうと思います.それ以外に関しては,全体的に見れば概ね正常に機能している(正常に機能している方だ)と感じています.

*1:まずないだろうな,と言う程度の期待度ですが.

*2:そう言ったスタンスの是非はここでは問わない.

*3:コメント非表示など妥協案は徐々に出てきてはいます.