パソコン市場に見るイノベーションのジレンマ

上記の記事に関して感じたこと.まず始めに,ここで言われてる“パソコン”とはデスクトップ・パソコンを指すのではないかなぁと言う感想を持ちました.そう考えると,これはパソコン市場でのイノベーションのジレンマの事を指しているような気がします.イノベーションのジレンマ での図を真似ると以下のような感じでしょうか.

尚,ここで言う性能とは CPU x メモリ容量 x HDD容量 x グラフィックボード性能くらいを想定しています.上記の“パソコン”を“デスクトップ・パソコン”と読み替えたすると,確かにこれまでのデスクトップ市場が下位層の市場(ノート・パソコン市場)をターゲットとしていた製品に取って替わられようとしています.

ノート型の価格下落に歯止めはかからず、デスクトップ型からノート型への需要シフトが2009年も続く。その結果、2009年通年で初めてパソコン全体に占めるノート型比率が50%を超え、デスクトップ型を上回る見込みだ。デスクトップ型パソコンの生産台数は、2008年に続き2009年も大幅に減ることになる。

IT & 経営 :テクノロジー :日本経済新聞

性能的には,多くの場合において,ノート・パソコンもユーザの需要を十分に満たせる程度まで進化しました.さらに,ネットブックの登場によりこれまでのノート・パソコン市場では考えられないような価格破壊が起こり,これがノート・パソコンへの移行を加速させています.こういった状況から(“パソコン”を“デスクトップ・パソコン”と読み替えればの話ですが)“パソコン”がなくなってしまう(ネットブックを含むノート・パソコンに取って代わられる)と言うのは,その通りだろうと思います.

スマートフォンはパソコンの代替製品になり得るのか

さて,上記の記事のもう一つの候補に挙げられていた(iPhone に代表される)スマートフォン.果たしてこれは,パソコンの代替製品になり得るのでしょうか.個人的には,完全にパソコンに取って代わるのは不可能だろうと思います.

この図は,ウィンダミア・アソシエーツの考案した購買階層を使っており,最初は競争の中心は性能で,つぎに信頼性,利便性,価格へと移る.

イノベーションのジレンマ p.265--266

複数の競合する製品が競争を行う場合,競争の中心は,性能,信頼性,利便性,価格と言う形で移っていくそうです.スマートフォンは,これらのうち利便性の競争で分が悪いのではないかなと思います.

携帯電話やスマートフォンは,“どこにでも携帯できる”と言う利便性を得る代わりにいくつかの利便性を失っています.画面の大きさは十分と言うには小さすぎますし,キーボードやマウスの代わりとするにはスマートフォンの I/O デバイスは不十分です.特に業務でパソコン使う場合などは,多くの場合は業務を行うための十分な空間(環境)を与えられるため,こういった利便性を放棄してまでスマートフォンを使う必要性は薄くなります.PDA の失敗もこの辺り(画面が小さい,I/O が不便)に起因しているのだろうと思います.

もちろん上記の部分は,個人の主観や慣れに依る部分も大きい[1--3] ので上記の利便性で十分だと言う人も数多くいるでしょう.また,業務においても営業マンのような頻繁に様々な場所へ出かける必要がある人は,日常からスマートフォンを使っている方が都合が良いのかもしれません.ただ,上記のような人達との住み分けこそ起こるものの,パソコン(デスクトップ,ノート)が全てスマートフォンのようなものに取って代わられるような状況は起こらないだろうなぁと言うのが感想です.

以上,今さら感が強いですが少し整理してみました.