居酒屋は何を売っているのか

よしもとばななさんの「ある居酒屋での不快なできごと」 - 活字中毒R。 より.居酒屋も大変ですね.

「持ち込み」とその他の KY な行為の差異

さて,今回引っかかったのはこちらの記事.

デフレのおかげでもう長いこと値上がりしてないどころか、値下がりしているかも知れない居酒屋の相場だけど、それでも夕食込みで一人5,000円ぐらいにはなるし、酒プラスつまみで3,000円を下ることはあまりない。本当に酒「だけ」買っていたら、急性アル中で急逝できるぐらい酒買えるよね。

居酒屋の売りって、「居」だろ?「居ること」だろ?「客としてもてなされること」だろ?

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居酒屋が「酒だけを売ってる訳ではない」と言う意見はその通りだと思います.明示こそされてませんが,お会計として払うお金の中には所謂「おもてなし」と言われるサービス料も含まれています.そのため,「客に不快な思いをさせないようにもてなすべきだ」,「KY と呼ばれるような行為も(多少は)許容すべきだ」と言う意見も一理あります.

実際,そういった(所謂 KY と呼ばれる)行為に関しては,店側もそれなりの譲歩をしてくれます.大声で叫んだり暴れたりしても大目に見てくれたり,誰かが飲みすぎて嘔吐したとしても特に文句も言わず対処してくれたりと.

それでも,「持ち込み」だけは許容することができません.なぜなら,それを許容すると「大枚を払わなくなるから」です.

そのために大枚はらってるんだしさ。

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一般的に,居酒屋には「席料」と呼ばれるものがありません*1.そのため,店側が客からお金をもらうには「オーダーし続けてもらう」必要があります.つまり,現在の形態での居酒屋においては,「オーダーする事」が唯一客側に課されたルールである,と見なすことができます.

飲食物の「持ち込み」は,この唯一のルールを客側が破ることになります.「持ち込み」を許容すると「夕食込みで一人5,000円ぐらいにはなるし、酒プラスつまみで3,000円を下ることはあまりない」はずの会計が1,000円程度になったりします.こうなると,もはや店側はその人を客とは見なさなくなります.

ミニマム・チャージ制度の居酒屋は成り立つか

外国のバーで時折見かけるのがミニマム・チャージだ。最低保証というか、これだけは最低限の席料としていただかないとやってられません的なチャージ料のこと。日本のバーもそれを真似たのだと思うし、また日本的な考え方で定着したのではないだろうか。

4回 チャージ料って何だろう [ウイスキー&バー] All About

「持ち込み」を許容しようとすると,どうしても明示的に「席料(チャージ料)」を取ることを考えなければならなくなります.一人あたり2,000円+飲食代で「持ち込み可」のような感じで.

要するに「持ち込みOK、というかうちでは酒とかつまみとか売らんから、てめーら勝手にスーパーやコンビニで買ってこい。うちでは場所だけ提供する」っていう、そんな店が出来れば、結構需要はあるんじゃないのかなーということです。

これってもしかして新しいビジネスチャンス? - あままこのブログ

実際,「席料」と言う形が一般的なカラオケボックスでは,若干高めの料金を設定して「持ち込み可」にしている場所もそれなりに見かけます.お金さえ払ってくれれば「持ち込み」だって認めると言う良い例だと思います.

私たちはいちおう事情を言った。この人は、こういうわけでもう日本にいなくなるのです。その本人がおみやげとして海外から持ってきた特別なお酒なんです。どうしてもだめでしょうか? いくらかお金もお支払いしますから……。

http://www.enpitu.ne.jp/usr6/bin/day?id=60769&pg=20090808

その意味で,元の記事で言及されていた「店長」にあえて苦言を言うとすれば,客がお金を払うと宣言した時点でチャージ料と言う形でいくらか会計に上乗せすべきだった,と言うところでしょうか.ここでチャージ料を取っていれば,他の客に対しても「あちらのお客様からはチャージ料を頂いてますから」と反論することができます(まぁ,「あえて」ですが).

サービス業においては,多かれ少なかれ「おもてなし」に対してお金を取っています.したがって,「客を不快にさせないようにもてなすべきである」と言う意見は正しいです.しかし,それでも絶対に譲れない一線と言うものは存在します.現在の形態での居酒屋においては,それが「持ち込み」なのだろうと思います.

*1:「突き出し(お通し)」が実質的席料となっている場合も多いですが.