実際、私なども、日常会話では、Unicodeで済ませている。ユニバーサル文字セットとか、ISO 10646などと言ったりはしない。というのも、それでは、通じないからだ。
本の虫: C++0x本:UnicodeとUCSについて
…(中略)…
果たして、あえて「ユニバーサル文字セット」などと書く意義はあるのだろうか。誤解を招くだけではないか。
上記の例ではないですが、世の中には当初とは異なる表記、異なる文脈で使われるようになった所謂「間違った言葉」が存在します。代表的な例は、「的を得る」、(「荷が重い」と言う意味での)「役不足」辺りでしょうか。インターネットに関連した単語では、「ホームページ」、「URL」辺りもよく例題として挙がります。
これらの言葉は、自分が読む時には、前後の文脈から適当に推測する、どう言った意味で使用したのかを質問するなどして対応すれば良いのでそこまで問題にはなりません。しかし、自分が文章を書く側になった場合、これらの言葉への対応をどうするかは頭を悩ませる問題の一つです。
以下、対処方法をいくつか挙げてみます。
「正しい」とされる方の言葉を使う
例えば、「的を射る/的を得る」などの例は、どちらを使っても相手に伝わる内容には大差がないと考えられます。仮に「的を得る」と認識していた人が読んだとしても、違和感を覚える事はあるかもしれませんが、「的を射る」の意味を取り違える可能性は低いです。このように、どちら(正しい言葉/間違った言葉)を使っても相手に伝わる可能性が高い場合には、特別な信念や意図がない限りは(例:「的を得る」 は、間違いじゃない: tak shonai's "Today's Crack" (今日の一撃))、今現在、正しいとされている言葉使いをする方が無難である、と考えられます。
一方で、「役不足」のように本来とはまったく異なる(逆の)意味で誤用されるようになった言葉を本来の意味で使ってしまうと、読者(聞き手)との間で余計な誤解を生む可能性が大きくなります。多くの場合、文章を書く目的は「自分の意図を相手に正しく伝える」事なので、「正しい/間違っている」に固執する事はあまり良いとは言えません。
この辺りの判断は難しく、例えば「気が置けない」と言う言葉などは、誤解される可能性があるものの「正しい」とされている意味で用いられる事も多いように感じます。
「間違い」とされる方の言葉を使う
以前に、この問題に関して twitter で呟いたところ、「誤用であると認識した上で(誤用の方を)使えば良い」と言うアドバイスをもらいました。実際、「役不足」に関しては多くの人が誤用と認識した上で使っていると言う場合も多いようです。
正しい意味は、「素晴らしい役者に対して、役柄が不足している」という意味、つまり能力のある人につまらない仕事・簡単な仕事をさせるという意味なのですが、最近は逆の意味で使われることが多く、アンケート調査などでも日本人の半分が逆の使い方で覚えているようです。
(ただ最近は、逆の意味で使われていること自体はよく知れ渡っており、逆なのを承知の上で使っている人が多いと思われます。)
役不足とは - はてなキーワード
ただ、公式文書などの不特定多数に見られるような文章においては、この対処法を取る事は難しい場合が多く、個人的には、読者がある程度限定されている(想定できる)場合に限るかなと感じました。それ以外の場合で、どうしてもその誤用を誤用のままで(公式文書などに)使いたい場合は、初出時に注釈を付けた上で誤用のまま使用すると言う形が妥協点としては良いでしょうか。
使わない(言い換える)
「その単語でないと意味が伝えられない」と言う言葉は少なく、多くの言葉は別の言葉に言い換える事ができます。例えば、荷が重いと言う意味での「役不足」は、「力不足」と言う言葉で言い換えることができます。また、「荷が重い」と言う言葉をそのまま使うこともできます。このように、誤用で揉めている単語は別の単語で言い換えると言う形を取るのが対処法としては最も無難かなと言う気はします。
しかし、言葉によっては、その誤用を用いないと説明が非常に冗長になると言う場合も考えられます。この辺りは、先に述べた注釈を付ける形で逃げるなど、その場面に応じてうまく使い分ける必要があるように感じます。
結局はケースバイケースとしか言えないのが、難しいところでもあります。ただ、言葉の意味は時代とともに変わっていくものも数多く存在します。そのため、あまり「本来の意味」に固執する事なく、「相手に誤解なく正しく伝える」事を主眼にうまく対処していければなぁと思いました。