便利にしようとしたら逆に不便になったと言う話

2科目受験し回答時間を倍に…センター試験で“裏技”発覚 予備校「防止策が必要」 と言う記事を見ながら.

坂道が舗装されたら通行禁止になった

今いる事務所の目の前には,以前に自分も通っていた,大学への坂道があります.数年前に,この坂道に対して舗装工事が行われました.舗装工事を何故行ったかは分からないのですが,工事前は砂利道な所もあって通りづらかったので,その辺の利便性の向上もあったのではないかと思います.

さて,工事は終了して坂道は綺麗に舗装されました.しかし,この(舗装後の)坂道には一つ問題点がありました.凄く滑りやすかったのです.この坂道は自転車通学している学生がたくさん通る道だったので,坂道の舗装後に滑って転倒するような事故が多発し始めました.すぐに,「坂道はゆっくりと通行するようにしましょう」と言う注意書きの看板も出現しましたが効果は上がらなかったようです.

しばらくすると,「坂道では自転車から降りて押して通行しましょう」と言う看板とともに坂道に警備員が見回るようになりました.しかし,全ての学生が「押して通行」を守る訳もなく,登下校ラッシュ時には毎日のように(事務所からでも)警備員の笛の音と怒声が聞こえていました.

さらに時間が経つと笛の音と怒声は聞こえなくなりましたが,代わりに自転車で通行している姿もまったく見なくなりました.確認したところ,7時〜20時の間は自転車での通行自体が禁止されていました.

これを「一部のマナーの悪い人のせいで不便になった」と見ることもできますが,個人的には「設計の不備による改悪の割を食った利用者」と言う風に見えました.

「2科目のうち良い方の結果を利用」と言う戦略が取れなくなる?

来年は、世界史Aと同Bなど同一分野の受験は不可とした上で地歴・公民の計10科目(新たに「倫理、政治・経済」が追加)から2科目を選択できるよう変更された。理科もグループ分けをやめ、計6科目から2科目を選べるようになる。受験生に選択の幅を広げたのが特徴だ。

・・・(中略)・・・

大学入試センターでは「そうしたやり方を本当に受験生がやったら不正だ」としながらも、「不正が可能な制度であることは間違いないが、試験の実施方法の変更は考えていない」。合否判定に1科目の成績しか利用しない大学にも2科目の成績と受験した科目の順番を提供する対策を取る方針だ。

・・・(中略)・・・

同センターは「試験の際に不正を行わないように徹底し、不正があった場合は受験を無効にする」としているが文科省は「1科目選択の大学の場合は、(不正ができない)1科目目を採点するなど、防止策を入試センターと大学側で協議してほしい」としている。

2科目受験し回答時間を倍に…センター試験で“裏技”発覚 予備校「防止策が必要」

「受験生に選択の幅を広げた」が具体的に何を指すのかは分からないのですが,社会・理科を 1科目しか要求されていないにも関わらず 2科目受験する目的はほとんどの場合「点数の良い方を使う」です.理系だと,大学によっては物理,科学,生物から 1科目のセンター試験結果を利用すると言う形のところも多く,大抵の学生は 2科目受験して良い方を利用すると言う戦略を取ります.社会についても,「現代社会」辺りはまったく勉強していなくてもそれなりの点が取れるので,少しでも選択肢を増やすために公民も受験してしまうと言う事もよくありました.

しかし,上記の対策にある「1科目選択の大学の場合は、(不正ができない)1科目目を採点する」と言う方針が取られると,こう言った「2科目とも受験して良い方の結果を使用する」と言う戦略が使えなくなります.こう言った対策が実際に行われてしまうと,「受験生に選択の幅を広げた」はずが逆に選択の幅がさらに狭まってしまうと言う結果になります.

設計の不備による不利益を最終的な利用者が被らなければならないと言うケースはしばしば見られます.ただ,受験などその後の影響が大きいような領域では,もう少し別の落とし所を模索して欲しいなぁと言う気がします.