主張とその妥当性を示すためのシナリオ

エアコンはというと、これもここ数年のモデルで見ないとApple2Appleにならないのでそうするが、電源ONして部屋が冷え切るまでの30分程度はモデルによって勿論違うが350から700wは食う。大事なことなので二度言うが、熱い部屋を冷ますのに必要な消費電力は350-700wでこれが30分近く継続する!15畳リビング用なら700wいくし、6-8畳用なら350ってとこ。部屋が冷え切ったあと、それを維持するのに必要な電力は80-150w。勿論モデルによるし、出入りが多いかどうか、窓から太陽光がガンガン直射するかどうかでも大きく変わる。

節電にはエアコンを切るよりテレビを切った方が効果大!はデマ - キャズムを超えろ!

起動直後にかなりの電力を必要とすると言う視点は,改めて考えてみれば確かにそうだなぁとは思いますが,指摘されるまで気づかない事でした.「涼しくなったから節電のために一時的にエアコンを消すか」と言う行動は取りがちなので,気をつけようと思います.

さて.

「節電にはエアコンを切るよりテレビを切った方が効果大!はデマ」と言うタイトルは,執筆者自身も半ば釣りと宣言していますが,ここまで言い切ってしまうと,これはこれでミスリードになるんじゃないかなぁと言う気がしました.個人的に,最も気になったのは,「エアコンは起動時に最も電力を必要とする」と言う(最も伝えたい?)事実と「テレビとエアコンの消費電力の比較」の話をごちゃ混ぜにして書かれている部分.この記事で最も伝えたかった事は「エアコンは起動時に最も電力を必要とする」と言う部分だと思うので強調したい心理は分かるのですが,それならそれで「テレビとの(消費電力との)比較」の話とはもう少し独立して書かないと,この記事で批判されていた記事と似たような結果(読者を不必要に煽る)になっているんじゃないかなぁと言う気がしました.

この記事で主張されているのは以下の2点です.

  1. 室温安定後のエアコンとテレビの消費電力は同程度(昨今の改善度を見るとテレビのほうがやや有利?)
  2. エアコンは起動直後に非常に多くの電力を必要とする

まぁ省電力の話は家庭のコストカットという話とピークカットという話に二分される。原発問題で課題になっているのは後者。ピークカット側面からは、30分とか連続して500wとか使われるとタマランわけで、野村総研が何といおうと電力ピーク時間帯の「熱っつい部屋に返ってきて『ふぃーっ』と一息ついたてエアコンON操作」は一番強烈にダメージ与えるよ、と。18:30迄我慢するというのはひとつの作戦である。

節電にはエアコンを切るよりテレビを切った方が効果大!はデマ - キャズムを超えろ!

この2つの事実と「電力ピーク時間帯にエアコンがまだ動作していない」と言う前提条件をもって「エアコンを切る方が効果的」と言う主張(より正確に言うと,「エアコンをつけない方が効果的」)に説得力をもたせていますが,上記の2つの事実がわかっていれば別の作戦を取ることもできます.

  1. 必要と思えるほどの暑さではない時でも暑くなりそうであれば,電力ピーク時間帯より少なくとも30分前にはエアコンをつけておく(そして,電力ピーク時間帯が過ぎるまではエアコンは消さない)
  2. 電力ピーク時間帯はテレビを消す

もちろん「両方とも消す」と言う選択肢が消費電力的にはベストですが,熱中症などの健康状態への悪影響や「いったん消したけど我慢しきれずに再度エアコンをつけてしまう」と言う可能性を考慮すると上記の作戦はそれほど悪くないようにも思えます.ひねくれた見方をすると,「エアコンとテレビがどちらも稼動している状態で,どちらを消しても節約できる消費電力は同程度であり,かつ,再び稼動するのに要する電力はエアコンの方が大きい」のであれば,「エアコンを消すよりテレビを消す方が効果的」と言う主張はあながち間違いではないような気もします.

多くの物事は様々な要因が複雑に絡んでいるので,ちょっとした条件の有無で結論がガラっと変わってきたりします.何らかの主張をする際には,それらの複雑な要因の中からいくつかのものを組み合わせて妥当と思われるようなシナリオを慎重に組み立てていくのですが,やはり,主張しようとする事柄にとって不利な事実は見過ごされやすくなります.したがって,何らかの主張を読む場合には,そう言った事情にも気を付けて読む必要があります.