憂鬱なプログラマによるオブジェクト指向な日々の消失

先日、「Simple -憂鬱なプログラマによるオブジェクト指向な日々-」(simple-u.jp) へ訪問したところ「ドメイン売出し中」と言う悲しい画面が表示されました。2006 年 12 月 31 日を最後に更新を停止していた同サイトですが、遂にドメイン失効とともに全データが消失してしまったようです*1

ブログ 1,000 記事達成 にも記載しましたが、このブログは、物事の考え方、あるいは自分の考えの書き表し方など様々な面において、同サイトから非常に大きな影響を受けてきました。当時、ブログ時代以前の「テキストサイト」と呼ばれるジャンルを知る(そして、面白いと感じる)きっかけとなったサイトでもあり、そして「このサイトの真似事をしてみたい(何らかの自分の考えを Web 上で公開してみたい)」と言う欲求に駆られてブログを開設するきっかけとなったサイトでもありました。更新が停止して 7 年近く経過していますが、いまだに同サイトの記事をベース(引用)とした記事を投稿する機会も多々ありました。

そう言った Web 上で最も思い入れのあるとも言えるサイトが遂に(完全に)終わりを迎えた事への寂しさと、非常に価値のある(少なくとも個人的にはそう信じている)多数の言説が一夜にして全て消失してしまった事への残念感で、しばらく何とも言えない気持ちになりました。

サイト閉鎖とデータ消失とミラーサイト問題

上記のような事を思いながら、改めて「サイト閉鎖(データ消失)問題」の話を読み直してみるかと言う気になりました。

「管理するのは面倒だが、データーは公開しておきたい」という場合には、閲覧者の方にミラーサイトの作成・管理を依頼されてはいかがでしょう? 当サイトで公開している宇治IN茶筒のミラーサイトは「海外へ長期間出張するためサイトの管理ができなくなるので著作権を放棄します」という宇治さんの発言を受けて作成されたものです。毎日50〜200人くらいの方が訪問され、累計10万PVは閉鎖前の総アクセス数を超えています。

頼りにしてほしい閲覧者

それなりに人気のあるサイトが消えてしまうときに、それをとても悲しく思う人は必ずいます。その人がそのまま何もしないのは、(多くの場合)物理的な理由ではなく、「勝手にそんなことしていいのだろうか」という思いがあるからです。少なくとも、私の場合はそうです。

だから、管理人が金銭的・物理的理由でサイトを閉鎖せざるをえなくなったとき、閲覧者に逆にミラーの構築を依頼すれば、誰かが手を挙げるに違いありません。閉鎖直前、1日平均100人が訪問していた宇治IN茶筒には、ミラーサイトがふたつできました。

「私一人であらゆる閉鎖サイトを引き受ける」という話ではありません。各サイトの管理人は、「いよいよ困ったら各サイトの閲覧者を頼ってみてはどうか」と提案したいのです。サイトがすべて消えてなくなるより、自分がミラーサイトを引き受ける方がいいと考える閲覧者が、きっといるでしょうから。しかしその閲覧者は、管理人に頼られるまでは何もできない。そしてひとり鬱々としているのです。

人を頼るのは申し訳ないと思う人の気持ちは、わかります。けれども、頼りにされずに悲しい思いをする人の気持ちも、よくわかるのです。そして私は、後者により同情的です。

閉鎖する前に考えてほしいこと

個人的には、サイト運営者が「データを全て削除したい」と明確に意思表示した場合には仕方ないと思う(特に思いとどまって欲しい、とかは思わない)のですが、それ以外の理由でデータが消失してしまうのはやはり「残念だな」と言う気になります。今回に近い事例としては、Infoseek isweb サービスの終了とともに数多くの黎明期の Web ページが消失した事が記憶に新しいです。isweb の時にはミラーサイト(バックアップ)を作成しようと言う動きがいくつかあったようですが(参考:infoseek iswebライト閉鎖まとめ終了したinfoseek iswebサイトのバックアップを取っているサイトいろいろ)、この事例に限らず、残しても問題のないデータについてはできるだけバックアップやミラーサイト等で対応したい、と言った事はよく考えます。

その一方で、現代においては個人の一記事に対しても「具体的な金銭価値(≒アフィリエイト)」が付くようになり、これにともなって「良くない」風潮も見られる、あるいは加速するようになりました(参考:Web 残念論)。そう言った時代の流れの中で、上記の記事が書かれた時代(2003年〜2006年)と比較してすら、無秩序なミラーサイトを許容できる(ミラーサイト有志の良識に委ねられる)ような時代ではなくなりつつあるのも事実です。

なかなか難しいところですが、現状では Internet Archive 辺りの「ある程度の知名度、信頼を勝ち得た」Web サービスが、執筆者・読者双方にとって公正・公平であるような運営を期待して、その発展を見守るしかないのかなぁと言う気がしています。ちなみに、最初の「Simple -憂鬱なプログラマによるオブジェクト指向な日々-」については、その多くがアーカイブ済のようです(参考:http://web.archive.org/web/20130624024504/http://simple-u.jp/)。

D

*1:ググっても今のところ何も引っかからないので、サーバ上のデータも同時に消失したのではないかと推測されます。