株式会社キューブ・ソフト第16期の振り返り

Cube シリーズ概要

これまで個人的な振り返り記事を毎年執筆していましたが、ここ数年は私自身の活動と株式会社キューブ・ソフトの事業がほぼ同義であるため、今年からは法人としての事業を主眼に置きながら振り返ろうと思います。ちなみに弊社の期末は10月31日で、今年で16期が終了しました。

累積黒字転換を達成

今期、弊社として最も大きな出来事は繰越利益剰余金がプラス、すなわち累積黒字転換を果たした事でした。これは、弊社16期目にして初めての事となります。

時系列としては、私が収益面も含めて株式会社キューブ・ソフトの経営に参画する事となったのが2019年8月下旬で、翌年3月頃には単月黒字化を達成しました。ただ、それ以前の15年近くに渡って積もり積もった負債や、私が代表取締役に就任して組織を再編 する際に発生した一時的な費用を全て清算するには、ここからさらに1年半程度の期間を要する事となりました。今回、こうして弊社の経営状態が健全化し、有償・無償版を問わず継続的に製品を開発・提供し続けるための体制が整った事を公表できるまでに至ったのは、私自身とても嬉しく思います。

収益面に目を向けると、私が経営に参画して以降、それまでの広告収益への完全依存体質からの脱却を目指し、株式会社キューブ・ソフトでも正式に年間サブスクリプション形式の有償プランを公表しています(詳細は、株式会社キューブ・ソフトの有償・無償製品について を参照下さい)。これらの有償プランに対しては、現在までに様々な規模の法人、公益法人、あるいは地方自治体に至るまで多様な法人・組織の皆様から合計40件程度のご契約を頂いており、全収益に占める割合も10%弱と言う所まで成長する事ができました。今後も引き続き、多くの皆様にとって有益と思える製品となるよう、開発を継続して参ります。

経営に参画してからの3年半を振り返ると、当時の私は会社を引き継ぐ事に迷いはなく、また組織を存続させるために必要であれば自己資金を投じる事も厭わない心積もりでいました。ただ、当時の弊社は債務超過状態であり、単月黒字化を果たせる目算もなく、またキャッシュも数カ月以内にショートしかねないと言う危機的な財務状況でした。そう言った中で、経営的にも収益施策的にも完全に素人であった自分がゼロから解析を始め、手探りの中で行っていった収益改善が何とか間に合ったのは、数多くの幸運にも恵まれた結果かと実感しています。そう言った様々な必然・偶然で掴み取った現在の状況を維持できるよう、今後も頑張っていきたいと思います。

Cube シリーズに関する進捗

Cube シリーズ月間ダウンロード数の推移

Cube シリーズに関しては、ここ数年間は主要4製品(CubePDFCubePDF UtilityCubePDF PageCubeCICE)の開発に力を入れ、その中でも特に CubePDF Utility に注力してきました。その結果がダウンロード数にも現れてきているようで、最近は CubePDF と同程度の月間ダウンロード数で推移しています。さらに、有償版インストーラー の成約件数に関しては CubePDF Utility が最も多い状況となっており、これまでの成果を実感できています。

有償版の観点から見ると、ここ数カ月は CubeICE 有償版インストーラーへのお問い合わせもかなり増えている印象があります。CubeICE も数度の大規模改修を経て、ようやく実用レベルまで達したかなと言う印象を抱いているので、これを機に多くのユーザーにご利用頂けるよう努めていきたいと思います。CubeICE に関わらず、有償版ユーザーのご指摘やご要望でソフトウェアの機能が改善された事例も多数出てきています。このような形でソフトウェア自体が進化し、有償版・無償版ユーザーがともに利益を享受できるようになる事を弊社としても祈っています。

また、昨年の 12 月に CubePDF シリーズの英語化 を本格的に開始し、約1年が経過しました。その結果ですが、例えば Google Analytics で www.cube-soft.jp にアクセスしてくるユーザーの地域を確認すると、2021年の1年間では日本ユーザーの割合が98.23%だったのに対して、2022年の1年間では83.15%まで減少していました(非日本ユーザーのアクセスが増えている)。また、ソフトウェアの更新確認のためのアクセスで確認すると、非日本語圏ユーザーの割合が最も大きい CubePDF Utility で全体の5%強と言う所まで成長したようです。取り合えず始めてみた施策の一つでしたが、少しずつ海外ユーザーも増えており、英語対応への励みにもなる結果となりました。

GitHub Sponsors 事業に関する進捗

GitHub Sponsors 一覧

2021年9月8日に GitHub Sponsors を利用した OSS スポンサー事業 を始めて1年と少しの年月が経ちました。現在までにスポンサーとなっている個人・組織は合計8件で、弊社から提供している金銭は必ずしも多くはないのですが、折に触れて言及頂いたりと弊社としても嬉しく思っています。

今期、弊社が新たにスポンサーになったのは @zakuro9715 (zakuro)@Ablaze-MIRAI (Ablaze) と言った若い人々が中心となりました。Ablaze に関しては、窓の杜での紹介記事 によると主に中学生・高校生によって構成されているそうです。ソフトウェアや Web サービスを取り巻く開発環境を鑑みると、現代においては若い人々が活躍する事に対する驚きはまったくないのですが、やはり実際に活躍している姿を見ると応援したくなる人情が出てきます。

予算の都合もあるので全てと言う訳にはいかないのですが、今後も C#/.NET、あるいは Windows 方面で精力的な活動を続けている(特に若い)人々を見かけたら、積極的にスポンサーになれるよう頑張っていきたいと思います。

GitHub Activity に関して

GitHub Activity

最後に、毎年言及している(私個人の) GitHub Activity ですが、今年も何とか1日1コミット以上を継続する事に成功しています。近年は、それまでのイチ開発者から経営者としての役割も担うようになった関係で、開発以外の業務をこなす事も多くなってきました。そのため、今日は忙しいから……と開発を先延ばしにしようとする気持ちが出てくる事もしばしば経験します。

私の性格の問題として、1日やらないと、それが3日になり、1週間になり、やがてまったくやらなくなってしまうと言う苦い経験を何度もしてきました。そのため、近年は「どれだけしょうもない事でも良いので、何かしら人力で1日1コミット以上行う」事を自らに課すようにしています。ノルマのようなもので文章にするとネガティブなイメージも強いのですが、今の所は、この制約が自分および弊社にとってプラスに働いているように思います。

現在も、あくまで私の主業はソフトウェア開発と自負しています。これが言葉だけにならないように、今後も精進して参ります。