コンピュータ上でのお金の儲け方

特に良いタイトルを思いつかなかったので直球で.最近,Adobe Flash のアップデートを行う機会があったのですが,そのときに下記の画面を見て個人的にかなり驚きました.

現状,(パソコン上で)Web ブラウズを行う場合 Adobe Flash は必須に近い位置にいるプラグインの一つのように感じます(Flash がないと閲覧できない Web ページがどんどん増えてきている).したがって,ほとんどのユーザは一度は Adobe Flash のインストール(またはアップデート)を行うために上記のページを訪れる事になります.そう言った状況の中で,上記の Web ページに何らかのソフトウェアがバンドルされている(しかも,デフォルト設定で一緒にインストールされるようになっている)事の影響力は相当なものであると予想されます.

パッケージウェア以外の商用ウェアの軌跡

最初期に自分の開発したソフトウェアでお金を稼ぐ事を考えた場合,シェアウェアと言う形を取る事が一般的でした.しかし,ほとんどのシェアウェアは,他のフリーソフトウェアで代替される,制限解除のためのプロダクトキー(ID, パスワード,...)が流出してしまうなど様々な要因が重なり廃れる事になりました.

シェアウェアに関しては,「本当に良いものであればお金は払われるはずだ」のような主張も根強く残っていました.

中でも私がもっともお勧めするのは、お客様が購入前に実際の製品(ソフトウェア)を無料で制限なく使える「お試し期間」をもうけることです。

パソコンや電化製品は店頭で手にとって試すことができます。洋服であれば試着ができます。しかし、ソフトウェアは購入前にインターフェースを見ることができず、実際に使うこともできない場合が多く、以前から私にはこれが不思議でした。お客様の立場からすると、生活用品と同じくソフトウェアもきちんと現物を見てから購入の意思決定をしたいはずです。

http://japan.internet.com/busnews/20100611/8.html

ソフトウェアではありませんが,試用期間の例で個人的に印象に残っているのは 10年くらい前のネットワークゲーム・ブームです.当時(今もですが),MMO RPG をはじめとするネットワークゲームは,正式に月額課金制度に入る前に「β期間」と称してユーザにゲームの面白さを体験してもらうための無料期間を設けていました.しかし,多くのネットワークゲームは正式課金後のユーザ激減に採算が取れなくなり,別の方法を模索する(現在の主流はオプション的なアイテムへの課金制度)か諦めると言う道を取らざるを得なくなりました.

「良いソフトウェアであれば売れる」と言う主張は確かに一理ありますが,ユーザに「お金を払ってまで使う」と言う気にさせるためには「良い」に加えて「独自性(≒他の人が実装方法を知らない)」が求められることになりました.「独自性」がない場合,しばらくすれば類似のフリーのものが出現し,多くのユーザはそちらを使うと言う選択肢を取るようになります.これを回避する方法として,「(ボタンの配置などの)ユーザーインターフェースなどに対して特許を取り,他人(他社)が同じ使い勝手を実現できないようにする」と言う手法も取られましたが,ここまで実現できる人は一部に限られました.

こういった紆余曲折の結果,何らかのソフトウェアを開発・配布する事によって金銭を稼ぐ方法は,現在はソフトウェアに広告を表示させるアドウェアと上記のような「何らかのソフトウェアをバンドルし,バンドル先の企業から報酬をもらう」(バンドルウェア?正式名称はまだないか)と言う2つの形に落ち着きつつあります.これは,「ユーザから直接金銭を受け取る事は諦めた」と言う事を表します.

アドウェアやバンドルウェアは,登場初期はユーザに非常に嫌われていましたが,数が増えていくにつれて徐々に(半ば諦められる形で)受け入れられ始める事になりました.しかし,この方法にも問題は残っています.それは,「パソコンの扱いに慣れてくるほど,この間接的な金銭のやり取りにも関わらないようになる*1」と言う事です.そのため,上記の「デフォルトでインストール」と言う設定になっているからも分かるように,「初心者の無知を利用する」と言う性質が非常に強くなっています.

「お金を払ってもいいから,ユーザに自社のソフトウェアを宣伝したり(実際に)インストールしてもらいたい」と考えている企業は割と存在するようです.そのため,所謂「パソコンに詳しいユーザ」もこの間接的な金銭のやり取りに関われる何かがあればもう少しうまく回るような気もするのですが,これを解決する良い方法は未だ現れていません.

Web 上でのアフィリエイト

Web 上では,Google AdsenseAmazon アソシエイトなどの「アフィリエイト」と呼ばれる方法が一般化したと言う印象があります.アフィリエイトも,特に Google Adsense のようなクリック報酬式のものは,初心者が意味も分からずに押してしまう事と誤クリックによるものを当てにしているような印象を受けます.釣りでも何でもいいからとにかくアクセス数を稼げと言う理由の一端がここ(誤クリックしやすいような箇所にアフィリエイト用バナーを貼っておく)にあるような気がします.

ただ,個人的な経験では,Google Adsense のバナーを押すことは皆無ですが,Amazon アソシエイトのバナーは気になって押してしまう事も多いように感じます.また,この blog でも Amazon へリンクする際に一応アソシエイト用の ID を挿入していたりするのですが,思ったよりはクリック率が高いように感じます(購買率までになるとまた話は変わりますが).この辺りを考慮すると,アフィリエイトに関しても所謂「情報リテラシの高い人」を間接的な金銭のやり取りに参加させる何かがあるような気もするのですが,なかなか具体案は思いつきません.

自分がパソコンを触り始めて 15年位経ちますが,コンピュータ上で動くものに対して「ユーザから直接金銭を受け取る」と言う形は難しいと言う印象は年々高まっています.そのため,ある企業から別の企業への金銭の受け渡しにユーザが間接的に関わると言う形が一層強まっていくのだろうと予想しているのですが,この形のベターな方法(具体的に言うと,間接的な金銭の受け渡しに「パソコンに詳しいユーザ」も参加する方法)がなかなか現れず,難しいところです.

*1:広告をクリックしたり,バンドルされているソフトウェアをインストールしたりしなくなる