この度、株式会社キューブ・ソフト (CubeSoft, Inc.) は GitHub Sponsors および Open Collective を利用して、企業として Open Source Software (OSS) やその他の有用な活動を行っている開発者のスポンサーになる取り組みを開始しました。現在、弊社がスポンサーになっている開発者の詳細は GitHub Sponsors 等の活動実績 を参照下さい。
はじめに
GitHub Sponsors や Open Collective を通じてスポンサーになる 企業としての動機 は広告戦略の一環、もう少し具体的に言うと、これらの活動を通じて弊社および CubePDF を始めとした Cube シリーズ や CubeVP および有償版インストーラー等の有償プランに対する認知度やブランドイメージの向上を図る、と言った内容になります。弊社の取り組みについては、株式会社キューブ・ソフトの有償・無償製品について を参照下さい。
個人としての動機については……少し昔話をしようかと思います。昔、CubeVP の販路拡大を模索していた時期にプレゼンテーションをする機会がありましたが、この時に頂いた指摘の一つに「タダで手に入るソフトウェアに対して、誰がカネを払おうと思うんですか?」と言うものがありました。
この指摘については、CubePDF 等、一般的に「無料ソフト」と呼ばれているものに対する(ソフトウェア開発者ではない方々の)認識としては普通にあり得る事は理解していましたし、CubeVP と CubePDF の位置づけを伝えきれなかった私のプレゼンテーション能力不足も原因として挙げられます。……が、そう言った理解とは別の所で、実際に上記のような言葉を直接投げかけられた時の感情的なインパクトは正直大きかった事も事実です。
この出来事から数年が経過し、幸いにも弊社の各種有償プランには多くのお問い合わせやご成約を頂けるようになりました。まだまだ、これらだけで組織を維持できる程の収益を生むまでには至っていませんが、先に頂いた問いに対する回答を行動で示せた事には一定の満足感を抱いています。
その一方で、これだけでは不十分で、今度は自分が資金を供出する側として何か行動を起こしたいと考えるようになりました。そんな折、GitHub が GitHub Sponsors for companies プログラムを発表し、日本でも企業として参画する事例が見られるようになりました。
- 時雨堂として GitHub Sponser を利用して OSS 開発者のスポンサーになりました
- 企業として Github Sponsors になる (Kazamori)
- GitHub Sponsors を使って「企業」として寄付をした話 (Cybozu)
- 会社(ヴェルク)として Github Sponsors になりました
- Ubie がスタートアップだからこそ OSS に寄付をする理由
- PLAID は GitHub Sponsors を利用して OSS のスポンサーになりました
- スタディプラスは RSpec に寄付しました
- ゼンアーキテクツは GitHub Sponsors を通じて OSS をサポートしています
- GitHub Sponsors を通してtextlintのスポンサーになりました (SmartHR)
弊社あるいは私としても、いつかはこの動きに追随したいと思っていたのですが、ここ数日 Twitter 上でたまたま「凄いな」と思えるような方々を連続して見かけたため、勢いで始める事を決定して、現在に至ります。
今後の予定
今後も弊社が利用するライブラリ等や個人的に凄いと思う取り組みを見かけた際には、スポンサーとして僅かながらでも力になれないか検討を続けていきたいと思います。尚、スポンサーになる対象としては、現時点では Windows ソフトウェアに関する開発者に絞って実施する予定としています。この理由は、弊社の主力分野を考慮してと言う事が 1 点、主観になりますが所謂 Web 技術と呼ばれる分野に比べてこう言った盛り上がりに欠ける印象を抱いている事がもう 1 点となります。
弊社はまだまだ小さな企業ですし、広告宣伝費として計上できる金額もそんなに多くない現状ではありますが、地道に継続できるよう今後も様々な面において邁進してまいります。
活動実績
第8期 (2023-12-01)
- @ufcpp (Nobuyuki Iwanaga)
++C++; // 未確認飛行 C や C# によるプログラミング入門にて C# に関する情報を日本語で精力的に発信されています。C# の最新規格についても最速レベルで記事として公開してくれるため、私自身いつもお世話になっています。 - @neuecc (Yoshifumi Kawai)
株式会社 Cysharpの代表取締役として、様々な C# のライブラリを開発・公開している方です。実行時のパフォーマンスに対して一切の妥協を許さずに限界を突き詰めていく姿は、普段ゆるふわに開発している私にも強い刺激を与えてくれます。
第7期 (2023-06-07)
- @rui314 (Rui Ueyama)
LLVM lld linker や mold の開発者です。C++ で開発する際にネックとなる部分の一つがビルド時間なのですが、これらのプロジェクトはビルドの内、リンクと呼ばれる処理を高速化する事を目的として開発されています。mold は、既存のものよりもかなり高速にリンクする事が可能となっており、世界的に利用されているソフトウェアの一つとなっています。
第6期 (2023-05-19)
- C++日本語リファレンス (cpprefjp)
@faithandbrave さんを中心に編集・運営が行われている C++ 日本語リファレンスです。2011 年 8 月に改訂された C++11 以降、凄いスピードで進化している C++ を使いこなすために必須の Web サイトと思います。この度、cpprefjp - Open Collective を通じてスポンサーを募っている事を知り、弊社も微力ながら参加する事にしました。 - @surapunoyousei (Ryosuke Asano)
Floorp と言う Firefox ベースの Web ブラウザを開発している方です。窓の杜での紹介記事 で Ablaze と言う学生コミュニティとともに知りました。開発はもちろん、Web ブラウザに関わる情報を精力的に収集・発信しているようで、応援したいとの思いからコミュニティとは別に開発者に対してもスポンサーになる事にしました。
第5期 (2023-01-11)
- @faithandbrave (Akira Takahashi)
C++ 日本語リファレンスである cpprefjp や、同じく Boost C++ Libraries の日本語リファレンスである boostjp の編集・運営を始めとして、C++ に関わる情報を日本語で精力的に発信されています。 Boost.勉強会 の主催者でもあり、日本における C++ のコミュニティには欠かせない存在となっています。尚、cpprefjp に対しても Open Collective を通じて別途スポンサーになっています。 - @shibayan (Tatsuro Shibamura)
長年に渡り、しばやん雑記(ブログ) を始めとして、Windows や Microsoft から提供される技術に関する情報を発信されています。最新技術へのキャッチアップも早く、Microsoft によって発表された技術が期待できるのかどうかを推し量る手がかりを得る上で欠かせない情報源となっています。また、これらの功績が Microsoft からも認められ 2011 年以降 Microsoft MVP の受賞を継続されています。
第4期 (2022-08-10)
- @Ablaze-MIRAI (Ablaze)
窓の杜での紹介記事 で知ったコミュニティで、同記事によると主に中学生・高校生によって構成されているそうです。Ablaze メンバーによる開発プロジェクトの一つである Floorp (GitHub) は、Firefox をベースにした Web ブラウザで継続的に Firefox 側の更新にも追随しているようです。別のプロジェクトで私自身も Web ブラウザのカスタマイズ業務に関わった事があったのですが、fork 元の更新に追随し続けるのは非常に骨の折れる作業で、その熱意と行動力に感嘆しました。Floorp 以外にも数多くのプロジェクトが立ち上がっているようで、その未来に期待したいと思います。尚、Floorp の開発者である @surapunoyousei に対しても別途スポンサーになっています。
第3期 (2022-03-29)
- @zakuro9715 (zakuro)
プロジェクトの凍結に伴いスポンサーも終了しています。 シェルスクリプトや PowerShell にコンパイルする静的型付きスクリプト言語 Cotowali の開発者です。Cotowari は 2021 年度の未踏プロジェクト に採択された他、ご自身も開発に参加されている V 言語 で実装された OSS としても注目を集めています。 GitHub Sponsors ではないのですが Cotowali スポンサー募集 や この Tweet 等に賛同し、Open Collective 経由でスポンサーになりました。
第2期 (2021-12-22)
- @batzen (Bastian Schmidt)
Fluent.Ribbon と言う Ribbon UI ライブラリのメイン開発者です。Fluent.Ribbon は CubePDF Utility を実現する上での中核となるコンポーネントの一つとなっています。 - @punker76 (Jan Karger)
C#/.NET のソフトウェアを数多く開発されており、CubePDF Utility では gong-wpf-dragdrop と言う WPF でドラッグ&ドロップを実現するためのライブラリを利用させてもらっています。 - @Reputeless (Ryo Suzuki)
Siv3D (OpenSiv3D) と言うグラフィック関連の C++20 フレームワークの開発を始めとして、C++ に関する様々な活動を行っており、その精力的な様子に感銘を受けました。 - @hiyohiyo (Noriyuki Miyazaki)
CrystalDiskInfo や CrystalDiskMark を始めとした Windows ソフトウェアの開発を精力的に継続されており、これらはいずれも数千万ダウンロードを記録するなど 世界中の人々に利用されています。
第1期 (2021-09-08)
- @mayuki (Mayuki Sawatari)
WeekRef.NET にて .NET 関連の情報をほぼ週刊で更新すると言う取り組みを始められました(参考 Tweet)。各記事のボリュームもかなりのもので、.NET に関わる開発者にとって非常に有用な情報源となりそうです。その他にも、.NET に関連するライブラリを精力的に開発されています。 - @sayurin (Kurata Sayuri)
FFFTP の現メンテナとして開発を続けられています。持続的に保守できるようコードのリファクタリングも精力的に行われているようで、この Tweet 等は個人的に感銘を受けました。