特定のサービスに依存したツール・サービスを提供する事

ラグナロクオンライン (RO) 回顧録.RO ではいくつか興味深い現象が発生したのですが,その一つに「支援ツール」と呼ばれていたユーザによって作成された(RO 関連の)ツールの栄枯盛衰が挙げられます.

支援ツール

もう一つの大きな潜在的不正行為として「支援ツール」が挙げられる。「ピンチの際に自動的に回復アイテムを使う」ものや「味方にかけた支援魔法スキルの残り時間を表示する」といった多用な機能を持ったものが個人によって非公式に開発されている。これらは現在BOTツール同様に公式として全面的に禁止されているものであり、サーバ負荷の増大に繋がる恐れもあるものである。

しかし、RO開発初期(β1テスト)の頃には開発スタッフにより「遊びの幅が広がるのなら」と支援ツールの開発を奨励された過去がある。その後運営がガンホー社に移り、ユーザーの間でチートツールと支援ツールの線引きが問題となり、最終的に「クライアントに影響を与えるツールの使用を全面禁止」と変更された。

日本のラグナロクオンライン - Wikipedia

Wikipedia でも書かれていますが,RO では当初,ユーザによる支援ツールの開発(RO クライアントから情報を抽出して表示したり,補助的なグラフィックを RO クライアントに無理やり描画したり,etc)が認められていました.そのため,初期 RO には数多くの技術者が便利な支援ツールを開発・提供しており,これが初期 RO における醍醐味の一つでもありました.パッチが当たるたびに新しい RoAddr.ini に更新する作業は「お約束」としてユーザの間で慣例化していました.私は,2002年頃の時点ではツール作成などに必要なプログラミング技術・知識についてほとんど理解していなかったので,そういった支援ツールを開発できる技術者の人達を尊敬・憧れの念を抱いて見ていたのを覚えています.

しかし,時間が経つにつれて RO では BOT 問題が深刻になっていきました.BOT 問題について議論する際に問題になった事項の一つに「BOT と支援ツールはどう違うのか?」と言うものがありました.様々な人が独自の(BOT と支援ツールを区別するための)定義を提唱しましたが完全に解決する事はなく,最終的には Wikipedia にも書かれてある通り「RO クライアントに干渉する全てのプログラムを禁止する」と言う告知が出され,RO における支援ツールの歴史は,(少なくとも表向きは)その幕を閉じました.

Twitter の不穏な動き

なぜ,突然このような話を持ってきたのかと言うと,ここ最近の Twitter の動きが何か不穏だなぁと感じたからです.

Twitter が流行った(ここでは 2007年の第一次ブームを指します)理由はいくつかありますが,その中の一つに「多数の API が公開されていたので Twitter に関連したそれっぽいサービス・ツールが簡単に作る事ができた」ため,そういったサービス・ツールを開発・提供する技術者達が集まってきて賑わったと言うものがあります.一時期は,「Web 技術者なら Twitter 系のマッシュアップ・サービスの一つや二つは取りあえず公開しておくべきだ」のような主張もぽつぽつ見受けられました.

Twitter は,全ての機能・コンテンツを自前で用意する代わりに API を公開しておく事で,ユーザが勝手にコンテンツを作り,それによって集客効果を高めてくれる事が期待できました.しかし,ある程度賑わってきて多くのサービス・ツールが乱立し始めると,今度はその集客効果よりも様々な問題(トラフィックの増大,Twitter が意図していなかったような使われ方)への対応にかかる負担の方が大きくなってきます.こうなると,Twitter 自身が上手いガイドラインの作成に事に失敗した場合,先の RO の例のように最悪「全て禁止」と言う選択肢を取ってくる事も(Twitter 自身が「全て禁止」を断行する事はまずないでしょうが)考えられます.

Google Adsense に依存しすぎるのは危険だ」と言うような話はよく聞きます.Twitter ベースのサービス・ツールの開発は,Google Adsense のように収益に直結する問題よりはいくらかマシですが,それでも特定のサービスに依存したツール・サービスを(収益源として)どれくら注力して開発していくのかは,よく検討しないと怖いなぁと改めて感じました.