繰り返されるソフトウェア頒布・販売方法の歴史

問題のアプリ「Virus Shield」は1週間ほど前から3.99ドルで売り出された。「有害アプリのインストール防止」「アプリやファイルをリアルタイムでスキャン」「個人情報の保護」などの機能をうたい、星4.7の高い評価を獲得。米国のPlay Storeの新着有料アプリのランキングでトップに浮上し、ダウンロード数は1万を突破していたという。

ところがAndroid Policeが調べたところ、このアプリの実態は、タップすると×印のアイコンがチェックマークのアイコンに変わるのみで、それ以外の機能は何もないことが判明。「セキュリティ上のメリットは何1つないことを確認した」という。

Google Playトップ人気の有料アプリ、実態は中身なしの詐欺アプリ - ITmedia NEWS

上記事を見た時、最初に思い出したのは CompJapan のメモリ最適化ツールに関する事例でした。

ASテクノロジ」という不可解な独自の技術を用いてメモリ内のデータを最適化するという「新メモリ最適化ツール」を、シェアウェアの形態でVector等を介し公開したことで広く知られるようになった。同ソフトは、「大変効果があった」という意見もあるにはあったが、技術的にメモリを最適化する機能がないことが指摘され、公開は停止されるに至った。

…(中略)…

開発元のCompJapanの主張とは異なり、一般には上記のような機能はないと考えられている。そのように考えられている根拠に、メモリ最適化のためのエンジンが「ある変数に一定の数を足した後に同じ数を引く作業を36万回繰り返すだけで、メモリに一切干渉していない」点が指摘されている。 具体的には下記の通りである。

   For Bbbb = 1 To 3000
   Print #1, Jjjj 'CPU処理のためのPrint文
   For Kkkk = 1 To 120
   Kkkk = Kkkk + 65468543
   Kkkk = Kkkk - 65468543
   Next Kkkk
   Next Bbbb

開発元のCompJapanの弁解によれば、メール等でメモリ最適化の効果があった旨の報告を受けたことで、「(メモリ最適化の効果に)何が関係しているのかは分からないが、本当に最適化させる効果があるのではないかと思うようになった」とのことである。

CompJapan - Wikipedia

「一見するとまともに動作しているように見える GUI だけを作成し、有償(シェアウェア)で配布する」と言う点が非常に似ていて、「歴史は繰り返されているのだなぁ」と言う感想を抱きました。

Windows とスマートフォンでのソフトウェア配布方法の推移

私はモバイル機器上でのソフトウェアの開発にはあまり関わっていないので、あくまで素人目での印象ですが、15 年前位に Windows の「フリーウェア(無料ソフト)」、「シェアウェア」界隈で行われていた頒布・販売方法の影を現在のスマートフォンアプリに感じる事が多々あります。例えば、下部に広告が掲載されているアプリを見ると FlashGet を思い出し、その度によく「歴史は繰り返す」のような事を思います。

その一方で、Windows 上でのソフトウェアでは結局、あまり受け入れらずに廃れる事となった「アドウェア」と言う形態が、スマートフォンでは、ユーザにはウザいウザいと罵られつつも主流な形の一つとして定着しているのは興味深い所です。これについては、プラットフォーム側(Apple、Google)でいろいろサポートされている事や Web 上における Google AdSense 等の経験を経て広告が付属している事に対する心理的な抵抗感が薄れた事などいくつかの理由が考えられますが、同じ道を歩んだとしても必ずしも同じ結果にはならないと言うのは面白く、そして難しい事だなと実感します。

現在の Windows 上でのソフトウェアの商業的な頒布方法は、ユーザから直接金銭をもらって販売するものを除くと、「バンドルウェア」と言う形が主流になってきました。これはこれで、ユーザからウザいウザいと罵られるのですが(特にオプトアウトの場合)、それでも「アドウェア」と言う形よりは幾ばくか許容されているようです。各業界これからどういった歴史を歩むのか(例えば、スマフォアプリがバンドルウェアに移行する、Windows 等の PC アプリがアドウェアに回帰する等々)気になる所です。