広告収入の未来

3/7〜9と研究会@沖縄に参加してきました.そこでの講演の中で,IPTVの収益モデルについて話していたものが少し印象に残っているので,今日はその話題に関して.

まず,IPTVに限らないのですが,Web上で公開しているコンテンツ自体から収益を上げるのはかなり難しいというのが大元の問題点.例としてナップスターが挙げられていたのですが,ナップスター現状では大赤字で,ベストシナリオを描けたとしても黒字転換するのに10年程度要するらしいとの予測でした.ユーザはWeb上ではほとんどお金を使わず,例えばネットゲームなどにおいても月額課金タイプのものはかなりコケています.mixiでも無料だからこそ成功したのであって,当初から完全な課金制度であったらあそこまでの成功を収めることはできなかったでしょう.そういう訳で,ユーザから直接お金を徴収することはかなり難しいのが実情です.

それでどうするのかと言うと,その講演者の主張としては今後は広告で収益をあげるモデルに持っていくべきだ,と.個人的にもその道しかないような気はするのですが,果たしてうまくいくのか,と個人のアフィリエイトの例を思い浮かべながら考えていました.

昨年,VIPブログ炎上事件の際に,VIPブログの管理者がアフィリエイトから得ていた収入の試算がありましたが,大体月に数十万円から百万円程度ではないのか,というのが大勢でした.

日50万PV前後稼いでいるサイトなんだし、ユニークユーザーが10万単位で存在する小規模雑誌メディア、地方新聞社サイトに匹敵するサイトなのに、月100万しか稼げないのかよ、と見るか、一人でそんなに稼げるなんてウラヤマスとみるか

http://blogpal.seesaa.net/article/18437084.html

個人サイトの話ですが,50万PV/dayを弾き出しても月100万程度.企業が同程度の(アクセス)規模のページを持っていれば話はまた変わってくるのでしょうが,それでも現状では広告を収益モデルとするのは辛い(ハードルが高すぎる)のではないか,という印象を受けました.実際,講演中に広告収入でパッケージ販売を行っている企業と同等の利益を得ているのはGoogle位とも受け取れるような図(講演者はその図から広告という収益モデルに可能性があるという主張でしたが)もあったので,それを考えてもハードルは高いように思います.今後,インターネット自体にブランド力のようなものが付いてきて広告単価が高まれば事情も変わってくるでしょうが,さて,それは何年後の話になるのか.

もう一つ気になるのが,インターネット上に存在するページの広告による質の低下に関する話題.ソース元は忘れてしまいましたが,どこかで広告による収入が一般的になると,Webページがアダルトサイト化(コンテンツの9割が広告)するのではという指摘がありまして,私もこれは一理あるような気がします.現状でも,アフィリエイトを積極的に行っているWebサイトへ行くと,言葉は悪いですが,ページがウザイなぁと感じることが結構あります.それでも現状では,コンテンツがメインで広告はサブ,というスタンスは崩れていないように思いますが,今後,広告がもっと儲かるものになってくると,広告がメインでコンテンツはサブ(最悪コンテンツはないという可能性も)というもので溢れてしまって,ユーザは辟易してしまう,という未来もあり得そうで少し怖いなと感じました.

ただ,広告が収益モデルとしてどんどん浸透していけば,個人にとっても可能性は広がってきそうなので,取り合えずは応援するという立ち位置にいようかなとは思います.

蛇足 収益モデルに関して,アップルの収益モデルが少し面白かったです.iPodの売り上げ台数の推移とiTunes Storeでの楽曲のダウンロード数の推移は,描く曲線の形が一致するそうです(現在では,iPod 1台売れると20曲程度ダウンロードされている模様).アップルは,楽曲を売ることで得られる収入はほとんどないらしく,収益のほとんどはiPodを売ることによって得られるものに依っているそうです.つまり,iTSのコンテンツを餌にiPodを売るというのがアップルのビジネスモデルということになります.なかなかうまいなとも思いますが,iPodを持っているアップルだからこそできる芸当で,真似することは難しそうです.

アップルTVが後発ながらあれだけのシェアを獲得できたのは,スティーブ・ジョブズ1人の人脈のおかげだとか言う話も出ていましたが,全体的にアップルがやっていることはアップルにしかできないよなぁ,と感じました.だから強いのでしょうが.

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