選挙もありましたし、投票率のお話。
このグラフからいくつか言えることがあります。オレが見て取ったのは:
- 1990年代から2000年代前半にかけては全世代で投票率の低下が見られる
- 1950年代までに生まれた人(1889-1959年生まれと分類した人)の投票率は70%以上で安定している
- 以後世代が下がるに従い投票率は下がる傾向
- それにしても70年代、80年代(1969-89)生まれの投票率は低すぎる!
といったことです。
2012-12-14
このグラフを見て、個人的に気になった点は 1970 年世代 (1969/09-79/08) が 20 代だった時の投票率です。この時の投票率を見ると 57.76% となっており、1960 年世代 (1959/09-69/08)、1950 年世代 (1949/09-59/08) が 20 代だった時の投票率(それぞれ 57.83%、59.61%)と比較しても及第点と言える投票率であった事が分かります。及第点と言える選挙デビューを果たした 1970 年世代ですが、その後はそれまでの世代のように投票率が伸びる事はなく散々な結果となっていく事が、グラフから読み取れます。
この直接的な原因については、選挙の世代別投票率に関する検討 - Life like a clown でも触れましたが、「就職氷河期」である事は、ほぼ疑いのない事実であろうかと思います。1993 年(1991年?)にバブル景気が崩壊し、就職氷河期が到来する事によって職に就けない人々、あるいは非正規雇用者としてこれまでとは異なる形で企業・社会と関わる人々が増加した事が投票率の低下として表れたようです。問題は、「なぜ」低下してしまったのか、と言う点です。
就職氷河期世代の投票率が低い理由は何か?
Web 上でざっと検索した程度ですが、比較的よく見られた主張としては「景気の後退によってもたらされる絶望感、あるは政治への不信感(こんなご時世、政治に何を期待しろと言うのか?等)」と言うものがありました。「衣食足りて礼節を知る」ではないですが、就職氷河期の真っただ中にいる人からしてみると、自分の明日の飯すら心配しなければならない状況で政治の事を考えている余裕などなかったのかもしれません。
一方で、「こんな時だからこそ、きちんと投票して自分達の要望を通さないといけない」と言う指摘もあります。個人的に、この主張も正しいと思います。そして同時に、実際に苦難に直面した就職氷河期世代の少なからぬ人々もそう考えたのではないだろうか、とも思いました。しかし、実際の数値からは、そう言った考えに至った人はまったくいなかったか、いてもごく少数であったかのような印象を受けます。
実際にはそう考えた人々はほとんどいなかったと考える事もできます。しかし、個人的には、「投票率には、個々人の政治的感心以外の要素が強く関係している」と言う気がします。
世話焼き(おせっかい)な人の必要性
少し別の話をします。
「女性は婚活を“最後の手段”って言うけど、そのときにはもう暴落してるんです」本文自体には特に思うところはなかったのですが、掲載されていた図が興味深かったです。近年は「お見合い結婚」から「恋愛結婚」と言われますが、数的には「単にお見合い結婚分が消滅しただけ」と言う感じのようです。
そして愛だけが残った - Life like a clown
投票率低下問題の他に社会的問題となっているものとして結婚率の低下(正確には、結婚後の出生数の低下か)がありますが、結婚率に関しては「お見合い婚がなくなった分だけ低下した」と言う状態のようです。お見合い婚で重要な存在となっていたのが、(あまり乗り気でもない)若者 2 人をくっつけようとする上司や近所のおばちゃん等のいわゆる「世話焼き」な人々。そう言った、時には強引な事もするおせっかいな人々のおかげで、かつての日本は高い結婚率を誇っていました。
閑話休題。
投票率に関しても、「就職氷河期」以降の世代はこう言ったおせっかいをする人と接する機会が減り、それに伴って投票率も下がっているのではないか、と言う気がします。
最初から政治に対して強い関心や信念を抱いている人は別として、「投票は行っても行かなくてもどっちでもいい」程度の気持ちな人も多いだろうと予想されます。一方で、社会一般的には「投票は行くべきものである」と言う強い規範意識が存在します。
そこまで極端な話ではなくとも、世間一般では「投票に行かない事は悪」と言うイメージが強いです。
都知事選については「関心がある」と答えた有権者は90.7%。期日前・不在者投票を済ませたか、投票に「必ず行く」「たぶん行く」と回答した有権者は合わせて96.8%に上った。
時事ドットコム:東京は石原氏が大きくリード=東国原氏らが追う−12知事・4政令市長選【統一選】この調査では投票する気があると回答した人は 96.8% にものぼっていますが、実際の投票率は 57.8% だったようです。調査時に「たぶん行かない」と思ってる人が「行かない」と素直に回答できないのは「投票に行かない事は悪」と言う世間一般に根付いているイメージも影響しているのだろうと予想されます。
こう言った背景もあるため、組織や地域社会に属するようになると暗黙のプレッシャーから「批判されないために行っておく」と言う選択肢を取る人は増えていく事が考えられます。
選挙の世代別投票率に関する検討 - Life like a clown
そう言った状況で、例えば上司辺りから、「選挙には行けよ」みたいな事を言われた場合、「後でうるさく言われないためにも行くだけ行っておくか」みたいな損得勘定が働いて投票する事も考えられます。これだけだと印象が悪いですが、最初は気乗りせずに嫌々行っただけであっても、そのうちに投票行為が習慣化する事もあり得るため、こう言ったきっかけは重要であると言えます。
一方で、就職氷河期以降の世代は、雇用形態の関係(あるいは、そもそも職に就けない等)から、これまでよりも企業・地域社会と繋がりが薄い事も多く、そう言った「うるさく言ってくる世話焼きの人」もあまり存在しません。その結果、投票に行くかどうかは(それまでの世代よりも)己の信念・良心に強く依存すると言う事になります。
「己の信念・良心に強く依存する」と書くと何か恰好良いですが、こう言った状況だと、(外的要因によって投票率が底上げされる可能性のある)それまでの世代と単純な投票率だけで争っても勝ち目がない事は目に見えているので、そう言った意味で、個人的には投票云々については「投票に行くよう呼びかけると言う行為自体は良いと思うが、投票率が低いから若者は軽視されて当然だ的な論調には(無理ゲーを押しつけられている気がして)賛同できない」と言う意見です。
投票率と政治的関心(のみ)を強く結びつけるのは危険
投票率関連(特に世代間投票率)の話題を見ていてよく感じる事は、「投票率が増減する要因として、ほぼ各人の政治的関心しか考慮されていない(それを原因として批判・糾弾される)ような気がして危険である」と言う事です。
もちろん投票率に大きな影響を与える要因の一つとして「各人の政治的感心」は存在するだろうと思います。しかし、ある特定の世代の得票率だけが低下した場合、いきなり「その世代だけ政治的関心が低下した」と言うある意味精神論的な結論で片づけてしまうのは危険です。例え、最終的には該当世代の政治的無関心が原因であったとしても、それにはそれを引き起こした社会的構造の変化等さまざまな理由が存在するはずで、そう言った事について注意深く検討する必要があるように思います。
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