小泉改革が格差社会生んだという批判が行われたという記事が少し気になっていたので少し調べてみました.経済学などに関しては,まったくの素人なんであれですが.
所得の2極化
まず,所得の2極化について.ここ最近の記事では,2極化という言葉を見かける機会が多く,この現象がここ最近になって発生しているものであるような気になってきたりもします.しかし,これと同様の現象はパレートの法則として100年以上前から既に認識されています(以下,Wikipediaより抜粋).
さらに彼は、数理経済学の実証的な手法(統計分析)を用いて、経済社会における富の偏在(所得分布の不均衡)を明らかにした。これはパレートの法則とよばれている。この法則は、2割の高額所得者のもとに社会全体の8割の富が集中し、残りの2割の富が8割の低所得者に配分されるというものである。
つまり,所得の2極化は100年以上前から続いている現象であると言えます.そのため,焦点は2極化という現象自体ではなくその現象がどの程度拡大しているのかという事であると考えられます.
所得格差は拡大しているのか?
所得格差を表す指標としてジニ係数というものがあるそうです.以下に,所得のジニ係数の推移を表した図を示します.
この図を見ると,当初所得における格差は拡大傾向にありますが,再分配所得における格差は,最低の1972年と最高の2002年でもその差は0.0676にとどまっており,ここ最近で所得格差が拡大してきているという事実は確認できません.ちなみに,ジニ係数の解説によると,ジニ係数が0.4弱の場合,所得格差はおよそ5倍となるようです.また,同サイトによると
ジニ係数の目安
〜0.1 平準化が仕組まれる人為的な背景がある 0.1〜0.2 相当平等だが向上への努力を阻害する懸念がある 0.2〜0.3 社会で一般にある通常の配分型 0.3〜0.4 少し格差があるが、競争の中での向上には好ましい面もある 0.4〜0.5 格差がきつい 0.5〜 特段の事情がない限り是正を要する
とのことで,現在の状況は競争の中では正常な枠組内に収まっていると言えます.今後,さらにこの増加傾向が続きジニ係数が0.4を超えるようであるならば,格差を抑えるような対策が必要になってきますが,現状では何とも言えません.さらに,実録▽家計調査による所得格差の推移においても,低所得世帯に対する高所得世帯のここ最近の所得倍率はあまり変化しておらず,格差が拡大しているという事実は確認できないという結論が出ています(内閣府「経済格差は拡大せず」とありますが,この辺りを基にしているのではないかと思います).
以上から,所得格差がそこまで拡大している訳ではないのではないかと考えられます.統計データを鵜呑みにする事は危険ですが,(参考:Simple: 統計という嘘,「いんちき」心理学研究所: 『正しい統計データ』を使ってウソをつく方法)今のところはマスコミが煽りすぎなのかなぁと.