グローバリゼーションの先にあるもの

今回は,昨今叫ばれている``グローバリゼーション''に関して.もともとは,カナダへ行ったときにその話題が出たことがきっかけです.あの時は,``このままでは日本は,ダメだ.これからは,もっと世界的な視野で見ていかなければ''という話だったと思います.

個人的には,``世界的な視野で物事を見る''ことはそれなりに重要だと思うので,そうすることに対して特に反論はありません.ただ,その結果``今のアメリカにある多国籍企業の後を追う''ことになるならば,それに対しては多少の不安を覚えます.

まず始めに,``日本企業はアメリカを真似ることができるのか''という疑問が浮かびます.アメリカのような多国籍企業を真似ようとした場合,日本人の気質を少し変えなければなりませんが,少なからずの人がそういった気質を捨てたくないと考えています.``空気を読め''などがその最たるものでしょうか.多国籍企業となる場合には,もう少し論理的なコミュニケーションが必要となってきますが,多くの人はそういったコミュニケーションよりも``空気を読む''というコミュニケーションに美徳を感じています.

次に,仮にアメリカのような企業を真似ることができたとして,それが本当に最善なのかどうかという疑問が浮かびます.アメリカは,日本以上に経済格差が大きな国です.

各国のジニ係数の推移

図録▽所得格差の長期推移及び先進国間国際比較

カナダで話をしていた時に,``出張でIntelへ行ったが,技術者は中国人ばかりだった''といった話がでましたが,その最も大きな理由の一つに``雇用賃金が安く済むから''ということが挙げられます.もし,現在言われている``グローバリゼーション''が成功したとすると,日本の技術者はそういった人達と比較され,賃金などの面でかなり不利を負うことになります(この現象は,既にかなり進んでしまっているようですが).

経済産業省の今の悩みは、「IT産業の階層化の弊害によっておこる下流プログラマーの収入の低下」だそうである。「プライムベンダー」と呼ばれる「上流コンサルタント」たちがインドや中国にも仕事を発注できることを理由に、激しく値切り始めたために、今やわずか一人月30万円というケースもあるという。


Life is beautiful: ソフトウェア仕様書は料理のレシピに似ている

以前,トヨタ自動車奥田碩会長(日本経団連会長)が``格差が拡大しても全体が底上げすれば問題ない''というコメントを出されていましたが,グローバリゼーションが進んだ場合,IT業界の技術者に関して言えば,所得水準が下がってしまうのは避けられないのではないかと思います.

アメリカの後を追った場合,それが成功しても失敗してもその先にある未来はあまり良いものではないのではないのかなと.だからと言って``じゃあ,どうすれば良いのか''と言われると,私には分からないとしか言えないのでが.

最後に,少し印象に残ったテキストを紹介して終わります.

このように、歴史上何度も起きたグローバリゼーションに対して、日本はかなり上手に対応してきている。スペインやポルトガルがアジアにキリスト教を布教したときは、鎖国を敷いて独立を守った。


・・・(中略)・・・


産業革命後のグローバリゼーションは、日本には「黒船」というかたちで現われた。これに対しては、変化に対応しきれず凋落した他のアジア諸国を尻目に、開国と明治維新を断行して対応した。その後、欧米の帝国主義を安易にまねた結果、無謀なアジア侵略と世界大戦を起こすという失敗もしたが、戦後はまた西側の自由貿易体制をうまく使い、経済大国になった。


最近のグローバリゼーションに対しては、日本が今後どう対応すべきかまだ見えておらず「日本は乗り遅れている」という懸念の声も大きい。だが、これまで巧みにやってきた歴史をふまえるならば、乗り遅れを心配をする必要はなく、日本らしさを失わずに対応すれば、それだけでうまくいくように思える。


グローバリゼーションはどこからきたか