なぜ「子供に見せたくない番組」のトップが毎年「ロンドンハーツ」なのか?

PTA「子どもに見せたくない番組」8年連続「ロンドンハーツ」 の記事を見るたびいつも「どうして毎年ロンドンハーツがトップなんだろう?」と言う疑問を抱きます。

上記は平成22年度の「子供に見せたくない番組」の結果ですが、「ロンドンハーツ」が他をかなり離してのトップとなっています。私自身が「ロンドンハーツ」と言う番組を見たことがないので内容に関してはまったく分からないのですが、他のバラエティ番組と比較して際立ってひどい内容であると言う事も考えにくいため、この統計調査にどのようなカラクリがあるのか非常に興味があります。

そこで、公開されている過去の「子供に見せたくない番組」の結果を全て抽出してみました(全ての結果は、PTA活動応援!お役立ち書籍はこちら | 日本PTA全国協議会 にて PDF で公開されています)。

ざっと見ましたが、明確な何かを推測する事はできませんでした。以下、気が付いた事など(尚、今回の検討ではクレヨンしんちゃんは他のバラエティ番組とは取り合えず切り離しています。結果を見ると「クレヨンしんちゃん」は小学5年生の保護者の批判票で全体が底上げされている格好で、これは、比較対象が「ドラえもん」、「サザエさん」、「ちびまるこちゃん」辺りの比較的おとなしめの表現がなされているアニメになるため、批判される「アニメ」の代表なっている感が強いです)。

まず、「ロンドンハーツ」は初調査時(平成15年度)もかなり高く、特に中学2年生の保護者の 20%と言う値が特出しています。恐らくこの時点では、本当に内容に問題があったのだろうと推測されます。そして、この次(平成16年度)から「めちゃ2イケてるッ!」が数値を伸ばし、ここからしばらく「ロンドンハーツ」、「水10!」、「めちゃ2イケてるッ!」の3強(正確には +クレヨンしんちゃんの4強)のような様相になります。

興味深いのは、「ロンドンハーツ」が安定した強さ?を見せているのに対して、「めちゃ2イケてるッ!」は数値が高かったり低かったりと結果にムラがあると言う事です。元の PDF ファイルには、「子供に見せたくない番組を実際に見ているかどうか」と言う設問も用意されているのですが、「ロンドンハーツ」は「全く見ていない」と言う回答が 50% 前後で推移しているのに対して、「めちゃ2イケてるッ!」の「全く見ていない」と言う回答は 20% 前後で推移していると言う事です。この結果から、「めちゃ2イケてるッ!」に関しては批判票の多くが、保護者各自が実際に番組を見て(良いか悪いかを)判断された結果となっているのに対して、「ロンドンハーツ」に関しては(主に第1回調査時からの結果による)印象のみで記述してしまっている人が多数含まれているのではないかと予想されます。

その他、「ロンドンハーツ」以外の構成比率が全て下降傾向にある事も興味深い現象です。最初の数回の調査では「ロンドンハーツ」以外にも構成比率 10% を超えるような番組がいくつか見られたのですが、最新結果(平成22年度)では「ロンドンハーツ」以外の番組は高々 6% 程度の構成比率に収まっています。この結果から、全体的に番組内容が無難化してきており、保護者も「この番組が嫌い!」と(悪い意味で)強く印象に残っている番組がほとんど存在せずに回答もバラけている事が予想されます。これは、平成18年度の「14才の母」を最後に新しい番組で批判票を数多く集める番組が見当たらなくなった事からも分かります。

全体としては、「子供に見せたくない番組はロンドンハーツ」と言う報道がなされるから同番組の批判票が高い値を維持しているのではないだろうかと言う感想を抱きました。「見せたくない番組として記述した理由」の設問に「見せたくない番組であると報道がなされているから」みたいな項目を追加するともう少し面白い結果が見られるような気もしました。

『Proceedings of the National Academy of Sciences』に5月16日付けで掲載された論文によると、「集団は最初のうちは『賢い』が、他者の推測を知らされると、意見の多様性が狭まり、それによって(集合知が)低下する」という。「穏やかな社会的影響であっても、集合知効果に悪影響が及ぶ」

Surowiecki氏が述べているように、集合知が発揮されるためには、一定の条件がそろわなければならない。つまり、集団の各構成員は多様な意見をもち、また、それらの意見にはめいめい自力で到達する必要があるという。

http://wiredvision.jp/news/201105/2011051821.html

先ほど見かけた記事ですが、この類の統計調査は過去の結果を知っているとそれに引きづられてしまうと言う傾向があるようです。統計結果を見る際にはそう言った事にも注意しながら見る必要があるように感じました。