ダビスタ世代はどれくらい競馬に金を落としているのか?

具体的な検証データなどが何も見つからなかったので思い出話レベル.

競馬ファンにおける利益(ベネフィット)をまとめた図を同広告から引用します。
http://livedoor.2.blogimg.jp/gw7/imgs/5/d/5d466c47.PNG
図にあるように、競馬の魅力は配当金だけではないのは事実でしょう。分析・推理の楽しさは競馬の醍醐味ですし、スポーツ観戦に似た参加の楽しさも競馬にはあります。JRAは無理やり投資にからめたマーケティングを行うのではなく、もっとお金以外の魅力を強調していけばいいのに、と思います。

gw07.net

1990年代,競馬界に大きな動きがありました.中高生を含め,それまで殆ど競馬に興味を持つ事のなかった層が,「ダービースタリオン(ダビスタ)」と言うゲームをきっかけとして実競馬にも興味を持つようになって多数流入したと言うものです(この経緯で競馬に興味を持った人達の事は「ダビスタ世代」とも呼ばれます).私自身も「ダビスタ世代」の一人で,今でも「最高の名馬は?」と言う問いに「サイキョウクラウド」と答えかねない位にはハマっていました.

ダビスタ(の最強馬生産)においてはとにかく配合が重要だったので(いったん配合を決めると後は数百〜数千回のリセットゲー),最強馬を生産しようとすると自然と血統にも詳しくなっていきます.このせいもあって「ダビスタ世代」の競馬ファンの中には実競馬においても血統等の分析に重点を置く人が増えたようです.上記で言う「分析の楽しさ」を広めたものの一つと言えます.

ダビスタは,「みどりのマキバオー」などの競馬漫画とともに1990年代の競馬の流行,とりわけ一般人の競馬に対するイメージの向上に大きく貢献しました.その一方で,この世代への批判の一つとして「ダビスタ世代は金を落とさない」と言うものがありました.

思うに、ダビスタ世代のゲームにおける行動は、そのまま現実の競馬における行動と対応関係にあるのではないだろうか。血統にやたら詳しく、POGは好きで応援している馬のローテーションや騎手起用などについてネットなどで盛んに議論する。好きな馬のレースは必ず観る。馬券は応援馬券程度なら買うこともあるが、博打と呼べるほどは買わない。

彼ら(我々というべきか?)は競馬をギャンブルとしてではなく、育成ゲームの中で繰り広げられているものとして認識したところからスタートしている。そこでは先に述べたように、ギャンブルとしての競馬は非常に影が薄い。存在していないに等しいといってもいいだろう。きっかけにおいてギャンブルとしての印象が刷り込まれていないこの世代に、ギャンブルへの積極的な参加を促してもおそらくあまり効果がないのではないだろうか。払い戻し額の増加がニンジンになるとは思えない。

http://grass.iza.ne.jp/blog/entry/187696/

具体的なデータがないので主観なのですが・・・ダビスタでは基本的に生産者視点でゲームが進むので「ある一頭の誕生から引退まで」が主眼となります.ダビスタ内においてもレースで賭ける事はできますが,多くの人にとってはゲーム開始直後の資金稼ぎの方法の一つ程度の価値しかありませんでした.この行動パターンが実競馬にも反映されたせいか,「ダビスタ世代」にとって「レースで賭ける行為」は必ずしも必須とはなりませんでした(どちらかと言うとペーパーオーナーゲーム (POG) の方に興味を示す人も多い).私自身にもこの傾向があり,しばしば「賭けずに競馬を見て楽しいの?」と不思議がられますが,私にとっての競馬は最初から賭ける対象として映っていないので,賭けなくとも楽しむことができます.

このような経緯もあり「ダビスタ世代」はそれまでの競馬ファンに比べて(賭けに)消費するお金が非常に少ないと言われています*1.ここで,個人レベルであれば「楽しみ方は人それぞれ」で終わらせておくのが無難なのですが,JRA としては客にお金を使わせる必要があるのでそうも言ってはおられず,何とかお金を消費してもらうような方法を検討する必要があります.

ハイセイコーオグリキャップなどの特定の名馬をきっかけとして競馬に興味を持ったファンも同様に賭けにはお金を使わないと言う傾向が見られますが,その代わり関連グッズなどは購入したりします.そのため,こういった層には「賭け(ギャンブル)」の色をほとんど見せないような宣伝も行われます.例えば,ディープインパクトの時には関連グッズが売れに売れたようで,ダービー当日にディープインパクト像を展示すると言う「胴元としてそれはどうよ?」みたいな批判を受けてまでも,賭けを度外視した(ディープインパクトの)宣伝が行われました.

関連商品はよく売れ、競馬グッズの売り上げの1/3がディープインパクトの関連商品だったという。さらに、単勝馬券を払戻せずに取っておくファンも多数存在し、単勝馬券がインターネットオークションで万単位の取引をされることもあった。一般企業がディープインパクトとのタイアップ商品を売り出すこともあり、例えば銀座松坂屋ではディープインパクトの福袋まで発売された。また菊花賞宝塚記念の時には京阪電気鉄道の乗車カードである「スルッとKANSAI Kカード」でディープインパクトが図案となっているカードが発行された。

ディープインパクト - Wikipedia

しかし,「ダビスタ世代」はこう言った宣伝もあまり効果がありません.「ダビスタ世代」的に一番良いのは一口馬主のような道なのでしょうが,これは一口と言っても結構な額になるので気軽にと言う訳にはいきません.すなわち,「ダビスタ世代」は JRA 的には「せっかく競馬ファンになってもらったのは良いのだけど,お金を使わせる方法が思いつかずに何とも扱いづらい」と映っている可能性があります.

上記の記事で「JRAは無理やり投資にからめたマーケティングを行うのではなく、もっとお金以外の魅力を強調していけばいいのに」と言う指摘がなされていましたが,JRA 的には「それは15年くらい前にやったけど,結論としてはその後の扱いが難しくて微妙だった」みたいな感想になってるのかなぁと妄想したりしました.

*1:本当かどうかは分かりません.流行した当時の年齢的に,そもそも賭けられない,とか,自由になるお金が少ない等の要因があったような気もします.