久々にはてなブックマークの「コメント率」が気になったので調べてみました。
本題に入る前にまず、人気エントリに掲載される記事のブックマーク数の分布を見てみます。以下の図は、2013 年 9 月と 2012 年 9 月(ともに 30 日分)の人気エントリ(例:はてなブックマーク - 人気エントリー - 2013年9月1日)に記載された各 URL のブックマーク数の分布を示したものです。
調査してみて、すぐに気付いた点としては次の 2 点です。まず一つ目は、上のグラフからも分かるように「数千ブックマークを超えるような大当たり記事が消えた」と言う点です。1 年前の人気エントリではブックマーク数が 1,000 を超えるような記事もそれなりに出現していたのですが、2013 年 9 月ではそれが激減し、かなりの記事がブックマーク数 200 以下で収束しています。
二つ目は「日をまたいで人気エントリ入りする記事がほとんどなくなった」と言う点です。今回の調査方法だと人気エントリ枠は 30 日で 1,500 件(1 日 50 件)ほど存在するのですが、2012 年 9 月の調査結果では対象となった URL は 1,063 件でした。この差分(約 500 件)は重複 URL を弾いたものなので、1 年前の段階ではかなりの数の URL が日をまたがって人気エントリに表示され続けていた事になります。これが 2013 年の調査結果では 1,460 件となり、重複 URL の数は 10 分の 1 まで減少している事が分かります。
これらの結果から、1 年前と比べた特徴的な変化として はてなブックマーク人気エントリの新陳代謝が上がっている と言う事が分かります。これは、トップページとカテゴリページをリニューアルしました - はてなブックマーク日記 - 機能変更、お知らせなど で告知されたアルゴリズムの改善がうまく機能しているため、と言って良いだろうと思います。
滞留や偏りをなくすためにアルゴリズムを変更いたしました。一定時間でコンテンツが入れ替わるよう更新性を高めています。その日にしかチェックできない、新鮮なエントリーが楽しめるようになりました。人気エントリーのアルゴリズムは、今後も継続的に改善してまいります。
トップページとカテゴリページをリニューアルしました - はてなブックマーク日記 - 機能変更、お知らせなど
人気エントリのコメント重視傾向とライフハック系記事の受難
こうしたはてなブックマーク「人気エントリ」の変化ですが、新アルゴリズムは恐らく「はてなブックマークのエントリページに付くコメントを重視している」のだろうと推測されます(より具体的に言うと、恐らくはてなブックマーク人気エントリは、指標を「直近数時間におけるブックマークの増加数」から「直近数時間におけるコメントの増加数」に変更したのではないかと思われます*1)。
人気エントリがコメントを重視するようになった結果、発生した特徴的な変化として「所謂ライフハックと呼ばれるような記事*2 が、あまり人気エントリ入りしなくなった」と言うものが挙げられます。
上図は、先の 2013 年 9 月と 2012 年 9 月それぞれの人気エントリに表示された各記事の公開ブックマーク数とコメント率を散布図として表したもの*3 ですが、2012 年の頃には見えていたコメント率 10% 以下の特徴的なトレンド(赤丸で囲んだ部分)が 2013 年には消えかかっている事が分かります。このコメント率 10% 以下の部分に属するものの多くが「ライフハック」と呼ばれる記事でした。
直近31日での男子ハックのアクセス解析から主要な参照元メディアを確認してみた数字が以下。
参照元メディア 訪問数 Gunosy 26,521 29,615 32,300 はてなブックマーク 11,999 RSS 107,299 明らかに「はてなブックマーク」が少なくなっています。前年の同期間と比べると、はてなブックマーク経由は-48.97%、Gunosyは+5,183.07%です。
はてなブックマークのアルゴリズムが変更されたり、Gunosyのアプリが登場したりと様々な要因がありますが、一時期誰もが口を揃えて言っていた「はてなブックマークを狙え」という手法の時代は完全に終わりの時期に来たと感じています。
アクセスアップのためのはてなブックマーク狙いの時代は終わり、Gunosyの時代が来ている | 男子ハック
上記で「前年の同期間と比べると、はてなブックマークからの流入は約半分になった」との記述がありますが、これははてな運営側が、コメントを重視する等ある程度意図して「ライフハック系記事が入りにくいようにアルゴリズム調整を行った結果」だろうと推測されます*4。
上図は、先の散布図をコメント率ごとに集計して分布図にしたものです(縦軸を構成比率にしたのは、前述した理由で母数が異なるため)。これを見ると、以前と比べれば幾分かは、コメント率の異なる記事が均等に人気エントリ入りするようになってきた事が分かります。コメント率は記事の性質を図る指標の一つとして使えるので(ライフハック系の記事はコメント率が低い等)、以前よりも人気エントリ入りする記事が多様化しているのだろうと予想されます。
ちなみに、同じ人気エントリでも はてなブログの人気エントリ に関しては従来通り、コメントを考慮せずに「純粋なブックマーク数」を基準に選んでいるようです(あくまで経験則ですが)。そのため、はてなブログでの記事の場合、「人気エントリ」と「はてなブログの人気エントリ」の掲載順が全然違うと言う現象もたびたび見られます。
新 UI と人気エントリのアルゴリズムとの整合性が取れていない
最後に、運営に対してのコメントなのですが コメント一覧ページのコメントの表示を改善しました - はてなブックマーク開発ブログ と言う変更の関係で、現在は「新着コメント」の欄では「直近 30 件のコメントしか閲覧できない」ようです。
これ単体であれば(いろいろと戦略もあるでしょうし)特にコメントはないのですが、これまで述べてきたように、はてなブックマークはここ 1 年「エントリページのコメント」を重視したアルゴリズムを採用しています。したがって、現在は アルゴリズム的にはコメントを重視した記事を見せているはずなのに、UI 的にはコメントを軽視している と言う形になっており、戦略的にもちぐはぐな印象を受けます。
昨今のはてなブックマークの流れを見ていても、こう言った微妙な(UI とアルゴリズムとの)整合性の食い違いからユーザが流出してしまう事も十分に考えられますので、もう少し全体的な整合性を考えて改善を行っていく方が良いのではないかなと思いました。
追記 新着 30 件しか表示されないのは不都合(バグ)だったそうで、修正済みとの告知がなされました(参考:【修正済み】はてなブックマークのコメント一覧ページ「新着コメント」タブで、新着30件目のコメントまでしか表示されない不具合がありました - はてなブックマーク開発ブログ)。そんな訳で、この部分に関しては無しで。