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嘘やデマが“生き残れない”ツイッター:日経ビジネスオンライン を見ながら,デマや誤報関連について.

秩父別駅混雑事件」と「ダンボール肉まん事件」

誤報についての面白いサンプルとして「秩父別駅混雑事件」と「ダンボール肉まん事件」があります.

ダンボール肉まん事件

秩父別駅混雑事件」の方に関しては,反論報道が出た後は元の報道を疑うコメントが大勢を占めているのですが,「ダンボール肉まん事件」に関しては反論報道が出た後も「反論報道が捏造」のような反応がほとんどで,結局,人々がその話題が飽きて忘れるまで収束に向かう気配がありませんでした.

やっぱり「ダンボール肉まん」は幻だと思う。

…いや、幻だと思うけど、心のどこかで「本当だったほうが面白いのに」と期待する部分がある。「紙を肉として食わせて気付かせない」超能力の持ち主がいたほうが世の中面白い。「やらせ説は捏造」という陰謀論(長い!)が広まるのは「中国不信・嫌悪」だけが理由じゃなくて、そういった「(アンチ)ヒーローを待望する」気分が後押ししているのだろう。

「ダンボール肉まん」の幻 - 玄倉川の岸辺

デマが収まるかどうかは,「そのデマが本当である方が都合が良いか(面白い,叩ける,etc)」と言う点にも大きく依存します.上記の例では,「秩父別駅混雑事件」は読者的には本当でもデマでも,どちらでもでも良いような類の話題だったので反論報道が比較的すんなり受け入れられたのに対して,「ダンボール肉まん事件」は読者的には本当の方が面白いのでなかなか受け入れられなかった,と言う側面があるように思います.こういった側面があるので,最初の記事にも触れられていましたが,問題となるデマの登場人物が,政治家,マスコミ,中国,韓国,特定企業 (JASRAC など),etc,のようにネット上で嫌われている人達の場合はデマが収束し辛いと言う問題があります.

面白いものだけが転載される外部メディア

twitter で発生したデマが twitter 内で収まっていれば,最初の記事で述べられているようにそのうち収束に向かっていく効果も期待できますが,現在のネット上では「何か事件が起きる→2ch で盛り上がる→2ch まとめブログに転載される」と言うトレンドがあります.

ダンボール肉まん事件

上記は 2つの事件の 痛いニュース での取り上げられ方ですが,「秩父別駅混雑事件」の反論記事についても「若者を叩く」と言う形でまとめられています.かつて ニャー速 が「面白いは正義」と言いましたが,2ch まとめブログ,特にアフィリエイト収益を目的としているようなものは,面白いかどうかが大事で,本当かどうかはさしたる問題ではないと言う側面があります.「秩父別駅混雑事件」の件はそれでも反論記事のタイトルだけでも掲載されたのでいくらかマシですが,反論・訂正記事が何も面白くなかった場合には最悪,訂正記事の方は掲載されないと言う事もあり,この場合にはデマを収束させるのは難しくなります(読者が飽きて忘れるのを待つしかない).

東日本大震災関連のデマについては,「地震で倒壊して潰されている。痛い、誰か助けてくれ。」と言うデマツイートに関しては,このユーザを叩く方向へ向かったので各種 2ch まとめブログが「面白い」と判断して掲載した結果,デマであると言う情報が拡散されました.一方で,東日本大震災デマと思われる情報まとめ で紹介されているような他のデマについては,デマ報道が何も面白くないので取り上げられなかったものもあります(そもそも,デマ自体が取り上げられなかったものも多いですが).

このように,デマ関連の問題はいったん発生してしまうと twitter の枠内だけでは収まらなくなるものも多いので,その辺りは危険なところです.